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2018.12.26

あなたも知らず知らずのうちに予備軍に?【他人事ではないアルコール依存症#2】

KenCoM公式ライター:黒田創

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前回の記事で書いたように、現在日本のアルコール依存症数はおよそ109万人と推計され、年々増加傾向にあると言われています。また、その予備軍も推計294万人とかなりの人数にのぼります。その理由のひとつには近年のストロング系酎ハイの人気があって、7~9度とアルコール度数の高いお酒を安価かつ気軽に入手できる日本特有の状況が、誰もが簡単にアルコール依存に陥ってしまう危険性を生み出しているのです。

今回は自分でアルコール依存度をチェックする方法や、依存症の可能性が高い場合の対処法などについてです。
前回同様、東京アルコール医療総合センターの冨高 緑先生にお話を伺いました。

自分は大丈夫?AUDITで依存度チェック

アルコール依存症は単に飲酒量だけで計れる性質のものではなく、健康に害を及ぼすような飲み方をしたり、他者に迷惑をかける、危害を加えるといった状況の有無などを総合的に見て判断します。そのガイドラインとなるのは前回例に挙げたように、主に専門家が用いるWHO作成のICD-10が代表的ですが、他にもアメリカやオーストラリアなど6か国の調査研究に基づいて作られたAUDITと呼ばれるアルコール症スクリーニングテストによって、依存症や将来のリスクを皆さん自身で判定することが可能です。

10項目の質問がありますので、それぞれの回答の点数を足してみてください。

AUDITチェック項目※厚生労働省eヘルスネットより一部改変

Q1:あなたはアルコール含有飲料をどのくらいの頻度で飲みますか?

【回答】0.飲まない 1.1ヵ月に1度以下 2.1ヵ月に2〜4度 3.週に2〜3度 4.週に4度以上

Q2:飲酒するときには通常どのくらいの量*を飲みますか?

【回答】0.1~2ドリンク 1.3~4ドリンク 2.5~6ドリンク 3.7~9ドリンク 4.10ドリンク以上
*「日本酒1合(160ml)=2ドリンク」「ビール大瓶1本(633ml)=2.5ドリンク」「ウィスキー水割りダブル1杯(原酒で60ml)=2ドリンク」「焼酎お湯割り1杯(原酒で50ml)=1ドリンク」「ワイングラス1杯(150ml)=1.5ドリンク」「梅酒1杯(75ml)=1ドリンク」とします。

Q3:1度に6ドリンク以上飲酒することがどのくらいの頻度でありますか?

【回答】0.ない 1.1ヶ月に1度未満 2.1ヶ月に1度 3.1週に1度 4.毎日あるいはほとんど毎日

Q4:過去1年間に、飲み始めると止められなかった事が、どのくらいの頻度でありましたか?

【回答】0.ない 1.1ヶ月に1度未満 2.1ヶ月に1度 3.1週に1度 4.毎日あるいはほとんど毎日

Q5:過去1年間に、普通だと行えることを飲酒していたためにできなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?

【回答】0.ない 1.1ヶ月に1度未満 2.1ヶ月に1度 3.1週に1度 4.毎日あるいはほとんど毎日

Q6:過去1年間に、深酒の後体調を整えるために、朝迎え酒をせねばならなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?

【回答】0.ない 1.1ヶ月に1度未満 2.1ヶ月に1度 3.1週に1度 4.毎日あるいはほとんど毎日

Q7:過去1年間に、飲酒後、罪悪感や自責の念にかられたことが、どのくらいの頻度でありましたか?

【回答】0.ない 1.1ヶ月に1度未満 2.1ヶ月に1度 3.1週に1度 4.毎日あるいはほとんど毎日

Q8:過去1年間に、飲酒のため前夜の出来事を思い出せなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?

【回答】0.ない 1.1ヶ月に1度未満 2.1ヶ月に1度 3.1週に1度 4.毎日あるいはほとんど毎日

Q9:あなたの飲酒のために、あなた自身か他の誰かがけがをしたことがありますか?

【回答】0.ない 2.あるが、過去1年にはなし 4.過去1年間にあり

Q10:肉親や親戚・友人・医師あるいは他の健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすように勧めたりしたことがありますか?

【回答】0.ない 2.あるが、過去1年にはなし 4.過去1年間にあり

皆さんは40点満点中何点だったでしょうか?
点数が低いほどより健康に影響の少ない安全な飲み方となりますが、10~19点は依存症の危険性がい予備軍。20点以上になると既に依存症の疑いが高いと考えられます。

もし自分に依存症の可能性があったら?

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上のAUDITによって自分が依存症、またはその傾向があるとわかったとしても、ほとんどの人は「自分がアル中になるはずがない」となかなか認めなかったり、仮にそのことを認識したとしても、問題解決を後回しにしてしまいがち。それがアルコール依存症の発見を遅らせ、推計100万人以上の患者のうち治療を受けているのが5万人に満たない一番の原因でもあります。

よく言われるのが、アルコール依存症はその進行過程からみてお酒の飲み始めから治療につながるまで30年かかる病気であるということ。多くの人が飲酒を始める20歳前後は仲間と楽しみながら飲むのが主流だったのが(機会飲酒)、30代に入ると一人でも日常的に飲むようになり(習慣飲酒)、場合によってはどんどん酒量が増えたり、泥酔するまで飲まないと満足できなくなってしまう。そんな日々が続くと40歳を過ぎてから肝炎や膵炎、糖尿病など、長年の飲みすぎによる疾患が現われ始め、50歳前後になってようやく治療を始める患者さんが多いんですね。

でもその時点ではもう手遅れというケースもあって、アルコール依存症患者の平均死亡年齢は52~53歳というのが現実です。つまり知らず知らずの間に進行している恐ろしい慢性病で、早死にのリスクも非常に高いのです。

仮にスクリーニングテストで10~19点だったとしたら、自分がアルコール依存症予備軍であることを自覚してください。そして、それ以上依存度が悪化しないよう、飲酒量を減らす必要があります。
そのあたりについては次回で触れたいと思います。

冨高 緑(とみたか・みどり)先生

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【プロフィール】
東京女子医大卒。精神科医。東京アルコール医療総合センター(東京都板橋区)の専従医師としてアルコール依存症治療に長く携わっている。

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

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