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2024.06.28

GLP-1アナログ製剤は腎機能低下にも役立つのか【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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GLP-1は糖尿病や肥満症の治療の他に、主に腎機能低下の糖尿病患者にも有効性があることがわかってきました。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2024年5月24日付でウェブ掲載された、腎機能低下を合併する2型糖尿病患者に対する、GLP-1アナログ製剤の有効性についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

糖尿病治療薬の現状

2型糖尿病の治療に使用される薬剤として、合併症である腎機能低下の進行予防効果が確認されているのは、レニン・アンギオテンシン系の抑制剤以外には、尿にブドウ糖を排泄する働きを持つ、SGLT2阻害剤のみです。GLP-1アナログも、近年その評価が非常に高く、心血管疾患の予後を改善し、健康寿命を延長する効果も期待される薬剤です。

ただ、その腎機能低下を合併する患者さんへの有効性については、まだ精度の高いデータは限られています。

慢性腎障害を合併している患者を検証

そこで今回の研究では、世界38か国の387の専門施設において、2型糖尿病と慢性腎障害を合併している患者、トータル3533名を患者にも主治医にも分からないように、くじ引きで2つの群に分けると、一方はGLP-1アナログの注射薬であるセマグルチド(日本の商品名オゼンピック)を、週1回0.25mgからスタートして、問題なければ週1回1.0mgまで増量。もう一方は偽の注射を同じように使用して、中央値で3.4年の経過観察を施行しています。(試験期間は中間解析の結果により予定より早期に終了)これは日本でも使用されている用量と同じです。

レニン・アンジオテンシン系の抑制薬とSGLT2阻害剤などは、通常通りで使用継続されています。

対象となる慢性腎臓病は、推計糸球体濾過量が50から75mL/min/1.73㎡で、尿中のアルブミンが300mg/g・creatininより多いか、推計糸球体濾過量が25から50mL/min/1.73㎡で、尿中のアルブミンが100mg/g・creatininより多い患者とされ、尿中アルブミンがクレアチニン換算で5gを超えるケースは除外されています。

その結果、末期腎不全と腎機能の50%を超える低下、心血管疾患や腎臓病による死亡を併せたリスクは、偽注射群よりセマグルチド群で、24%(95%CI:0.66から0.88)有意に低下していました。また心血管疾患による死亡のリスクは18%(95%CI:0.68から0.98)、総死亡のリスクも20%(95%CI:0.67から0.95)と、いずれも有意にセマグルチド群で低下していました。

他の薬と同じような有効性が認められた

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このように、通常の治療にGLP-1アナログを上乗せすることにより、腎障害を合併する患者さんの予後は、トータルに改善しており、SGLT2阻害剤と並んで、GLP-1アナログの腎障害に対する有効性も、今回のデータによりかなり明確に示された、と言って良いようです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
© DeSC Healthcare,Inc.

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