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2022.01.15

学童期に感染する新型コロナの特徴【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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無症状や軽症ですむことが多いと言われる子供の新型コロナ。成人の事例と比べて、実際はどうなのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Lancet Child Adolesc Health 誌に、2021年9月3日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症の学童期の感染の特徴をまとめた、イギリスの疫学データの論文です。

▼石原先生のブログはこちら

小児の新型コロナ、体調不良が続くケースはどの程度?

新型コロナウイルス感染症は小児においては、比較的軽症もしくは無症状に終わることが多いと報告されています。しかしその一方で、体調不良が1ヶ月以上というような長期に渡り、持続するようなケースも報告されています。

ただ、成人の場合と比較して、そうした症状が持続するようなケースがどのくらいの頻度で生じているのかについては、あまりまとまったデータがありませんでした。

症状が持続するのは小児の中でも高い年齢層

そこで今回の研究では、イギリスの住民データを活用して、イギリスにおける学童期(5から17歳)の新型コロナウイルス感染症の事例の、症状と持続期間を集計しています。

同年代の258790名が登録され、そのうちの75529名が、感染を疑わせる症状で新型コロナウイルスの検査を受け(検査はRT-PCRもしくは迅速抗原検査)そのうちの1734名(5から11歳の588名と12から17歳の1146名)が陽性となっています。

最も陽性者で多かった症状は「頭痛」で、62.2%で報告されています。続いて「全身倦怠感」が55.0%で報告されています。

症状の持続期間は検査陽性者の中間値が6日で、陰性者の中間値は3日と短くなっていました。また症状の持続期間は年齢が高いほど長くなっていました。症状が28日を超えて持続していた事例は、陽性者の4.4%に当たる77名で認められ、高い年齢層でより多くなっていました。

長期持続する事例は少数

このように長期持続していた事例の症状は、全身倦怠感が84.4%、頭痛が77.9%、嗅覚異常が77.9%と多くなっていました。ただ、こうした長期持続事例においても、28日目を超えると症状の訴えやその数は減少し、56日を超えて残存していた事例は1.8%に当たる25例のみでした。

新型コロナウイルスの検査が陰性の感冒症状でも、28日を超えて症状の持続している事例は認められましたが、その数は0.9%に当たる15名と少なく、症状の数自体は多いという傾向が認められました。

症状の数自体はむしろ風邪の方が多い

このように、学童期においても新型コロナウイルス感染症の症状が長期間持続する事例はあるのですが、その頻度は成人に比べると少なく、その多くは2ヶ月以内には消失していました。

新型コロナウイルス感染症以外の感冒症状においても、こうした持続症状は認められていてその頻度は少ない一方、症状の多彩さはむしろ通常の感冒において多い傾向が認められました。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36