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2021.10.14

人工甘味料 or 砂糖?食欲を刺激する甘味料とは【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ダイエット中の方に人気の、0カロリーの人工甘味料。ジュースなどによく使われていますが、健康には影響はないのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に、2021年9月28日ウェブ掲載された、人工甘味料と砂糖のジュースを飲んだ時の、脳や食欲への影響を比較した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

0カロリーの人工甘味料は、ダイエットに役立つか?

糖質は身体にとって必要な栄養素ですが、ブドウ糖や果糖、およびそれが結合した糖質は、甘くてどうしても摂取過多になりやすく、その過剰摂取は肥満の原因となって、健康に悪影響を来すことが指摘されています。

その代わりに最近多用されているのが、0カロリーの人工甘味料ですが、こちらも過食の原因となったり、インスリン分泌を刺激して高インスリン血症を惹起するなどの、別個のリスクが危惧されるという側面があります。

ただ、この人工甘味料の健康リスクについては、研究方法によっても違いがあるなど、あまり実証的なことが分かっているとは言えません。

人工甘味料の飲料とショ糖の飲料の、脳と食欲への影響を調査

今回の研究はアメリカにおいて、18歳から35歳の病気のない一般住民76名を対象にしたもので、水と人工甘味料のスクラロース、ショ糖(スクロース)をそれぞれ一定量飲んだ後の、機能性MRIによる脳の変化と、食事量への影響を比較検証したものです。

その結果、特に肥満した女性においては、ショ糖よりむしろ人工甘味料を飲んだ後で、脳の食欲に関連する部位の神経機能が活性化され、その後の食事量も増加する、という変化が認められました。

こうした変化は男性や肥満のない女性では、明確には認められませんでした。

人工甘味料を飲んだ後で、インスリンなど代謝関係のホルモンなどの濃度には、明確な変化は認められず、こうした人工甘味料の食欲増進作用は代謝を介したものではない、という可能性が示唆されました。

人工甘味料はむしろ食欲を刺激する場合も

今回の研究では、肥満した女性に限っては人工甘味料は砂糖よりむしろ強力に、過食を刺激するという結果が得られました。

今後より詳細な検証が必要な知見ですが、人工甘味料が場合によってはダイエットに逆効果である、というデータは非常に興味深く、今後の研究の蓄積に期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36