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2023.08.22

どの禁煙治療薬が効く?シチシンとバレニクリンの有効性を比較【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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禁煙治療を行うときに用いる薬は数種類あります。その中でも安全性と有効性を兼ね揃えた薬はあるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2023年7月6日付で掲載された、新規の禁煙治療薬の有効性を検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

禁煙治療に広く使われている薬バレニクリン

禁煙治療にはバレニクリン(チャンピックス)という飲み薬が、世界的に広く使用されています。

この薬剤は脳でニコチン様の作用をすることにより、禁煙を補助する薬です。この薬は現状認可されている禁煙治療薬の中では、最もその有効性が高いことが、複数の臨床データにより確認されています。その一方でイライラや不眠などの精神作用や、めまいや吐き気、眠気などの有害事象が報告されています。

またその成分に発癌作用のある物質が混入していたという指摘から、日本では長期間その使用が中止されています。

バレニクリンに代わる薬として注目されているシチシン

それでは、もっと安全性が高く、有効性が同等な治療薬はないのでしょうか?

その候補として注目されているのが、シチシン(cytisine)という薬です。シチシンは植物由来のアルカロイドで、化学的に合成された物質ではありません。バレニクリンと同様に、脳でニコチン様作用を持つことが確認されています。これまでに偽薬やニコチンパッチと比較した臨床試験が施行され、ニコチンパッチや偽薬よりも、禁煙成功率が高いことが確認されています。

それでは、バレニクリンと比較して、シチシンは同等の有効性があるのでしょうか?

バレニクリンとシチシンの有効性を検証

今回の臨床試験はオーストラリアにおいて、禁煙希望の喫煙者トータル1452名をくじ引きで2つの群に分けると、本人にも試験実施者にも分からないように、一方はバレニクリンを12週まで使用し、もう一方はシチシンを25日間使用して、その後の禁煙成功率を比較検証しています。

その結果、治療開始6か月の時点での禁煙成功率は、バレニクリン群が13.3%であったの対して、シチシン群は11.7%で、この差は試験の設定上有意なもので、シチシンの有効性はバレニクリンと同等とはなりませんでした。

安全性と有効性を含めた評価を

このように、現状のシチシンの禁煙補助効果は、ニコチンパッチよりは高いものの、バレニクリンと比較すると少し見劣りがする、という結果になっていて、今後その安全性を含めた評価として、禁煙治療のガイドラインが整備されることを期待したいと思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36