2024.02.22
チーズのかわりにヨーグルトで減塩。塩分56%減のチーズリゾット【減塩ごはん】
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、健康な日本人の成人男女が目標とするべき食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。でも実際の日本人の食塩摂取量の平均値は10.1gで、平均2gを上回っている状況です。さらに2024年度国民健康づくり計画『健康日本21(第3次)』からは、食塩摂取量の目標値を7g未満に定めることが明らかになっています。
塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。日本人の3人に1人は高血圧といわれており、特に注意すべき生活習慣病です。減塩を習慣化することにより生活習慣病予防はもちろん、未来の健康づくりを行うことができるのです。
本連載『減塩ごはん』では、定番レシピを減塩しながら美味しく仕上げるレシピを管理栄養士の磯村優貴恵さんに教えていただきます。
塩分56%減のチーズリゾット
イタリアの代表的なお米料理といえばリゾット。本来は、お米から炊き、パスタのように少し芯が残るように仕上げますが、今回はあまったごはんで簡単に調理してみましょう。
定番のチーズリゾットでは、チーズの塩分が気になるところです。そこで、チーズの量を減らして、ヨーグルトで代用することで深みやコクをプラスしたレシピをご紹介します。
材料(2人分)
ごはん 300g
玉ねぎ 1/2個
しめじ 1/2パック(50g)
ハーフベーコン 4枚
にんにく 1/2片
オリーブ油 大さじ1/2
牛乳 300mL
水切りヨーグルト 50g
顆粒コンソメ 小さじ1
塩 ひとつまみ
粗びき黒こしょう 少々
粉チーズ 大さじ2(飾り用に少し取り分けておく)
塩分量(1食あたり)
塩分量:1.8g
一般的なレシピの塩分量:4.1g
※このレシピは、一般的なレシピと比較すると、約56%減塩になります。
主な栄養成分(1食あたり)
エネルギー 496kcal
たんぱく質 17.3g
脂質 18.3g
炭水化物 71.6g
糖質 67.7g
作り方
1. にんにくと玉ねぎはみじん切りにする。ハーフベーコンは細切り、しめじは石づきを取り1cm幅に切る。
2. フライパンにオリーブ油、にんにく、ベーコンを入れ弱火でゆっくりと加熱する。
3.ベーコンから油が出てきてにんにくの香りが立ったら、玉ねぎとしめじを入れる。玉ねぎが透き通るまで中火で炒める。
4.ごはんを加え軽くほぐしてから、牛乳、水切りヨーグルト、顆粒コンソメ、塩を加えて全体を混ぜ合わせる。
5. フライパンの縁がふつふつとしてきたら粉チーズを加え、とろみが出るまで混ぜ合わせる。
6. 器に盛り、粉チーズと粗びき黒こしょうをふって出来上がり。
このレシピのポイント
#1 弱火で炒めたにんにくの香りが満足度を高める
にんにくは弱火でじっくりと加熱するのがポイント。生臭さが消え、食欲をそそる香ばしい仕上がりになります。香りは満足感を増し、減塩の強い味方になってくれるもの。このひと手間が、減塩料理を美味しくするためには重要なのです。
#2 塩分の多いベーコンは細く切ってうま味アップ
うま味が多く含まれる食材は切り方ひとつで、料理全体の美味しさがアップします。
ただし、ベーコンには食塩が多く含まれているので、多く使いすぎると減塩できません。そうはいってもベーコンにはうま味がたっぷり含まれていますので、リゾットには欠かせない食材でもあります。
ベーコンのうま味を最大限に活かし、美味しさをそのままに減塩するためには、細切りにしましょう。できるだけ細く切って、料理全体にベーコンが行き渡るようにすれば、うま味パワーで減塩しても満足感のある味わいに仕上がるでしょう。
#3 きのこを細かく刻めば他の食材との相性がアップ
今回はスプーンで食べることを考え、1cm程度に粗く刻みました。こうすれば他の食材との大きさも揃って食べやすくなり、食材の味を均等にわうことができるので、満足感が得られやすくなります。
また、きのこ類には、三大うま味成分のひとつであるグアニル酸が豊富に含まれています。こちらもベーコンと同様に細かく刻むことでうま味を感じやすくなります。減塩の強い味方になるので積極的に使ってください。
【減塩豆知識】ヨーグルトのコクで味に深みを持たせ減塩に役立てよう
減塩するとどうしても味が淡白になり、物足りないと感じてしまう人も多いと思います。料理に深みを出したいときに役立つのが乳製品です。味のベースとなる部分に牛乳を使えばまろやかさ、コク、うま味を十分に感じられる仕上がりに。
通常のチーズリゾットでは、牛乳に溶けるチーズをたっぷりと入れることでチーズのコクや塩味をプラスしますが、塩分が気になるところ。そこで今回は、チーズと同じように牛乳を発酵させて作るヨーグルトで代用しました。チーズのコクを再現するために、プレーンヨーグルトと比べて成分がぎゅっと濃縮され、コクがある水切りヨーグルトを使っています。不足しがちな栄養素のひとつ、カルシウムも含まれるというメリットもあります。
美味しく続ける!減塩ごはんの10箇条
その1. 旨味を活用
昆布、かつお、しいたけ、のりなどの旨味食材を活用することで、少ない塩分でも美味しく食べることができます。
その2.酸味で満足感を
酢、レモン、梅干しなどの酸味は刺激にもなり、料理にメリハリが出て塩分が少なくとも満足感の高い仕上がりになります。
その3.香りを感じられる1品プラス
レモンやすだちなど、香りのよい柑橘系を使用するほか、焼いた時の香ばしさ、温かい湯気とともに広がる香りを意識して調理をすると、満足感が高まります。
その4.スパイスで刺激をプラス
カレー粉、山椒、黒こしょうなど、スパイスを使いましょう。塩分控えめだと、どうしても始めは物足りなく感じてしまう方もいます。そんなときには、スパイスの刺激を上手に活用して、料理の味を引き締めたり、風味を引き立てましょう。
その5.とろみで味をまとめる
料理にとろみを持たせることで、舌の上に乗っている時間が長くなり、味をしっかりと感じることができます。とろみは片栗粉や小麦粉はもちろん、米やじゃが芋などの芋類でもつけることが可能です。
その6.“かける”から“つける”へ
醤油やソースを上からかけるとついかけすぎたり、必要以上に食材に染みたりすることで結果として塩分の摂りすぎに。小皿に少量の醤油(ソース)を出し、それをつけながら食べるという方法で調味料をどのくらい使ったか視覚的にもわかりやすく、塩分の調整に役立ちます。
その7.加工食品は控えめに
ソーセージやベーコンは保存性を高めるためにも、多くの塩分が含まれています。一度にたくさん食べ過ぎないように注意が必要です。
その8.献立にメリハリを
減塩すると最初は味気なく感じてしまうことも。だからこそ、食べるものすべてを減塩すると食の楽しみが半減してしまうかもしれません。まずは、メインは減塩、副菜はいつも通り、など1食の献立の中でもメリハリをつけることで、無理なく減塩を続けることができます。
その9.表示確認を習慣化
梅干し・だしパック・味噌など同じ食材でもメーカーや種類によって塩分濃度は全く異なります。まずは、買い物するとき、商品の裏側にある食品表示を見ることを習慣化しましょう。
その10.減塩商品を活用
最近は様々な商品で、減塩タイプがあります。例えば、醤油、みそ、料理酒、缶詰など。「塩分の計算が難しい」「忙しくて考えていられない!」という方は、いつも手に取っている商品や調味料を減塩タイプに変えることで、手軽に減塩生活を始めることができます。
記事情報
引用・参考文献
『毎日の食事のカロリーガイド 第3版』香川明夫・監修 竹内冨貴子・料理・データ作成 女子栄養大学出版部
著者プロフィール
磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆、食育講座など幅広く活動中。
制作
文・レシピ・写真:磯村優貴恵