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2023.12.14

とろみと調理手順が減塩のコツ。八宝菜風炒め物【減塩ごはん】

kencom公式:管理栄養士・磯村優貴恵

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厚生労働省のe-ヘルスネットによると、健康な日本人の成人男女が目標とするべき食塩摂取量は、男性7.5g未満、女性6.5g未満。でも実際の日本人の食塩摂取量の平均値は10.1gで、平均2gを上回っている状況です。さらに2024年度国民健康づくり計画『健康日本21(第3次)』からは、食塩摂取量の目標値を7g未満に定めることが明らかになっています。

塩分を摂りすぎると高血圧のリスクが高まります。日本人の3人に1人は高血圧といわれており、特に注意すべき生活習慣病です。減塩を習慣化することにより生活習慣病予防はもちろん、未来の健康づくりを行うことができるのです。

本連載『減塩ごはん』では、定番レシピを減塩しながら美味しく仕上げるレシピを管理栄養士の磯村優貴恵さんに教えていただきます。

とろみと調理手順が減塩のコツ。八宝菜風炒め物

一般的な八宝菜で使われる白菜ではなくチンゲン菜を使います。チンゲン菜は、βカロテン、カルシウムなどが豊富で栄養価的にも優秀な野菜。減塩に加えて栄養的にもバランスの良いレシピです。

材料(2人分)

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豚こま肉 50g
シーフードミックス 100g
うずらの卵 4個
チンゲン菜 2株
にんじん 1/4本
乾燥きくらげ 5g
生姜 1/2片
日本酒 大さじ1
サラダ油 小さじ2
ごま油 小さじ1/2
黒こしょう 少々

【調味料】
水 100mL
オイスターソース 大さじ1/2
鶏がらスープの素(顆粒) 小さじ1
片栗粉 小さじ1

塩分量(1食あたり)

塩分量:1.8g
一般的なレシピの塩分量:2.5g
※このレシピは、一般的なレシピと比較すると、約28%減塩になります。

主な栄養成分(1食あたり)

エネルギー  236kcal
たんぱく質 13.1g
脂質 17.0g
炭水化物 9.0g
糖質 5.8g

作り方

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1. シーフードミックスは水に3~4分浸して半解凍し、水を切っておく。チンゲン菜は葉と茎に分け、それぞれ半分の長さに切る。芯の部分はさらに縦に4等分に切る。にんじんは拍子切りにする。きくらげは水またはぬるま湯でもどし、食べやすい大きさに切る。生姜は千切りにする。【調味料】はあらかじめ混ぜ合わせておく。

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2. フライパンにサラダ油小さじ1と生姜を入れ中火にかけ、香りが立ったら豚肉、シーフードミックスを入れ炒める。肉の色が変わり始めたら日本酒を回しかけ、アルコールが飛んだらいったんフライパンから取り出す。

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3. 空いたフライパンにサラダ油小さじ1を中火で熱し、にんじんとチンゲン菜の茎を入れて炒める。

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4. 全体に油が回ったらきくらげを加え炒め合わせ、チンゲン菜の葉、うずらの卵を加え、2も戻し入れて炒める。2から出た水分にはうま味も含まれているため、残さずに入れる。

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5. チンゲン菜の葉がしんなりとしたら混ぜ合わせた全体に【調味料】を入れ、全体に絡める。とろみがついたらごま油を回しかける。

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6. 黒こしょうをふって完成。

このレシピのポイント

#1 とろみでうま味アップ!

とろみは舌の上でゆっくりと移動するため、刺激が長続きし、コクやうま味を長く感じられると考えられています。減塩料理はとろみを上手に利用することで、うま味を感じやすくなるのです。

調理する前に片栗粉とその他の調味料を混ぜ合わせておくのもポイント。オイスターソースのように粘度のある調味料は、少量だと全体に均等に行き渡らせることが難しいのですが、あらかじめ水や片栗粉などと一緒に混ぜ合わせておくことで全体に行き渡りやすくなります。

#2 部位によって硬さが異なる食材は、時間差で調理

チンゲン菜のように茎と葉で硬さが異なる野菜は、同じように加熱すると火の通っている部分といない部分ができてしまい、料理が美味しく仕上がりません。

茎と葉を切り分け、時間差で調理しましょう。こうすることで、硬い部分とやわらかい部分のどちらも良い状態に仕上げることができます。ちょっとしたひと手間を加えることが大切です。

#3 白菜の代わりにチンゲン菜で免疫力アップ!

一般的に八宝菜には白菜が使われますが、今回のレシピではチンゲン菜を使いました。

チンゲン菜にはβカロテンやカルシウムが多く含まれます。βカロテンには抗酸化作用があるほか、体内で必要な分だけビタミンAとなり粘膜の潤い保持に力を発揮します。また、免疫力アップに欠かせないバリア機能を維持するのに役立ってくれるので、ぜひ積極的に摂りましょう。

【減塩豆知識】減塩と美味しさにの両立に重要な野菜の“水分量”

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減塩料理に水分が多い野菜を使うことには、注意が必要です。なぜなら、水分が多いということは、味が薄まりやすいことでもあるから。お皿に盛ってからも味が薄まり続けるため、どうしても調味料を多く使ってしまうのが難点。

今回のレシピで使用したチンゲン菜をはじめ、白菜、キャベツといった野菜は、水分を多く含んでいます。

水分量が多い野菜は、はじめにしっかりと炒めてから煮ることによって煮込み時間が少なくて済み、余分な水分が出るのを防げます。また、塩味のある調味料を加えてからの煮込み時間を短くすることで、食材からの過度な水分の流出を防げるため、野菜から出る水分で味が薄まりすぎずに減塩でも美味しく仕上げることができます。

美味しく続ける!減塩ごはんの10箇条

その1. 旨味を活用

昆布、かつお、しいたけ、のりなどのうま味食材を活用することで、少ない塩分でも美味しく食べることができます。

その2.酸味で満足感を

酢、レモン、梅干しなどの酸味は刺激にもなり、料理にメリハリが出て塩分が少なくとも満足感の高い仕上がりになります。

その3.香りを感じられる1品プラス

レモンやすだちなど、香りのよい柑橘系を使用するほか、焼いた時の香ばしさ、温かい湯気とともに広がる香りを意識して調理をすると、満足感が高まります。

その4.スパイスで刺激をプラス

カレー粉、山椒、黒こしょうなど、スパイスを使いましょう。塩分控えめだと、どうしても始めは物足りなく感じてしまう方もいます。そんなときには、スパイスの刺激を上手に活用して、料理の味を引き締めたり、風味を引き立てましょう。

その5.とろみで味をまとめる

料理にとろみを持たせることで、舌の上に乗っている時間が長くなり、味をしっかりと感じることができます。とろみは片栗粉や小麦粉はもちろん、米やじゃが芋などの芋類でもつけることが可能です。

その6.“かける”から“つける”へ

醤油やソースを上からかけるとついかけすぎたり、必要以上に食材に染みたりすることで結果として塩分の摂りすぎに。小皿に少量の醤油(ソース)を出し、それをつけながら食べるという方法で調味料をどのくらい使ったか視覚的にもわかりやすく、塩分の調整に役立ちます。

その7.加工食品は控えめに

ソーセージやベーコンは保存性を高めるためにも、多くの塩分が含まれています。一度にたくさん食べ過ぎないように注意が必要です。

その8.献立にメリハリを

減塩すると最初は味気なく感じてしまうことも。だからこそ、食べるものすべてを減塩すると食の楽しみが半減してしまうかもしれません。まずは、メインは減塩、副菜はいつも通り、など1食の献立の中でもメリハリをつけることで、無理なく減塩を続けることができます。

その9.表示確認を習慣化

梅干し・だしパック・味噌など同じ食材でもメーカーや種類によって塩分濃度は全く異なります。まずは、買い物するとき、商品の裏側にある食品表示を見ることを習慣化しましょう。

その10.減塩商品を活用

最近は様々な商品で、減塩タイプがあります。例えば、醤油、みそ、料理酒、缶詰など。「塩分の計算が難しい」「忙しくて考えていられない!」という方は、いつも手に取っている商品や調味料を減塩タイプに変えることで、手軽に減塩生活を始めることができます。

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引用・参考文献

『八訂 早わかりインデックス 食材&料理カロリーブック』主婦の友社

著者プロフィール

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磯村優貴恵(いそむら・ゆきえ)
管理栄養士・料理家 
大学卒業後、大手痩身専門のサロンにて管理栄養士としてお客様の身体をサポート。その際に具体的な料理提案の必要性を感じ、飲食店の厨房にて約3年間の料理修行を行う。その後、特定保健指導を経て独立。現在は、茶道教室にて茶事講座や茶事での茶懐石の献立提案~調理を行うほか、子供から大人まで家族みんながおいしく食べられて健康になれるよう、レシピ・商品開発や執筆、食育講座など幅広く活動中。

制作

文・レシピ・写真:磯村優貴恵

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