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2024.03.01

カルシウムのサプリメントに注意。心血管疾患リスクとの関連を検証したら…【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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骨粗鬆症予防として広く使われているカルシウムのサプリメント。しかし、糖尿病があるなど心血管疾患リスクが高い方は、サプリの使用を見直した方がいいかもしれません。

今回ご紹介するのは、Diabetes Care誌に2024年2月付で掲載された、カルシウムのサプリメントが糖尿病の患者さんに与える影響についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

カルシウムのサプリメントは健康にいいのか、悪いのか

カルシウムはサプリメントとして摂取される、代表的なミネラルの1つで、その使用は主に食事によるカルシウムの不足を補い、骨粗鬆症の予防など骨の健康の維持にあると、一般にはそう考えられています。

しかし、最近になってサプリメントでカルシウムを摂ることが、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化関連の病気のリスクを、増加させるのではないかというデータが報告されて、その安全性に疑問が投げかけられる事態となっています。(※2)

サプリメントでカルシウムを摂ることは、通常の食事から摂る場合と比較して、摂取後比較的急激に血液中のカルシウム濃度が上昇する可能性があり、それが血管の石灰化などに繋がるのではないか、という指摘もあります。

特に糖尿病の患者さんは、動脈硬化進行のリスクが高く、骨代謝の異常も指摘されていますから、よりその影響を受けやすい可能性があるのです。

カルシウムサプリと心血管疾患リスクとの関連を検証

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今回の研究はイギリスの有名な遺伝情報を含む大規模な医療データである、UKバイオバンクのデータを活用して、434374人の医療データを元に、カルシウムのサプリメントの使用と心血管疾患リスクとの関連を、糖尿病の有無によって比較検証しているものです。

その結果、関連する因子を補正した結果として、糖尿病の患者さんにおけるカルシウムサプリメントの使用は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患のリスクを34%(95%CI:1.14から1.57)、心血管疾患による死亡のリスクを67%(95%CI:1.19から2.33)、総死亡のリスクを44%(95%CI:1.20から1.72)、それぞれ有意に増加させていました。

その一方で糖尿病のない人では、そうしたカルシウムサプリメントによる、心血管疾患リスクの増加や生命予後の悪化は認められませんでした。

どうやら全ての人にカルシウムのサプリメントが有害であるのではなく、糖尿病に代表されるような、心血管疾患のリスクが高い人では、そのリスクを増加させる可能性があるようです。

心血管疾患リスクが高い人はカルシウムサプリを控えて

これはまだ現時点では確定的な知見ではありませんが、カルシウムのサプリメントの意義が低下し、そのリスクの可能性が高くなってきていることは事実で、特に心血管疾患のリスクが高いような人は、カルシウムは食事から充分摂取して、サプリメントは使用しない方が安全であるとは言えそうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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