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2021.02.03

新型コロナ、トイレでの感染リスクを抑えるには?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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トイレや洗面台などの水廻りでの接触によって、新型コロナウイルスの集団感染が起きるケースがあります。感染リスクを抑えるにはどこに気をつければいいのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Science of Total Environment誌に2021年1月20日ウェブ掲載された、病室のトイレにおける新型コロナウイルス感染症の感染リスクについての論文です。

そう大した内容ではないのですが、結果が分かりやすいのでネットなどでは割と話題になっているものです。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナ、水廻りでの感染リスクはどの程度?

新型コロナウイルス感染症の集団感染において、問題となることが多いのが、洗面、トイレ、浴室の水廻りの感染です。

今回の研究は中国において、新型コロナウイルス感染症の患者を隔離して入院させている1室3ベッドの隔離病室において、環境サンプリングを行いその感染リスクを検証したものです。

その結果はこちらをご覧下さい。

環境サンプリングの結果を分かりやすく図示したものです。

通常の清掃が行われた病室において、部屋の表面サンプルでウイルス陽性となったのは、主にトイレの便器などの表面でした。ベッド周辺や空気中のサンプルからは、ウイルス遺伝子は検出されませんでした。

便器表面、トイレのドアノブ等からは陽性反応が

具体的には107カ所の物体表面のサンプルを採取し、ウイルス遺伝子をRT-PCRにより検出しています。

その結果7カ所で新型コロナウイルス遺伝子陽性を確認。

ウイルス量が多く陽性(Ct≦38)だったのが、2カ所の廊下側のドアノブ、トイレカバー1カ所、トイレのドアノブ1カ所でした。ウイルス量が少なく弱陽性(Ct 37から38)であったのが、トイレの便座シート、水栓のレバー、排気口のサンプルでした。

病室は換気システムが作動していて、空気のサンプルは病室の46カ所で採取されましたが、トイレ前の廊下で弱陽性であった以外は、ウイルス遺伝子は検出されませんでした。

触った箇所と手指の消毒は忘れずに

このように、充分に換気された室内で、空気感染は通常の場合は問題にはならず、トイレなどの水廻りの接触感染が、最も高リスクであると想定されます。

この場合必ず触るドアノブなどを消毒し、便座も使用する毎に消毒すると共に、トイレ使用時はマスクを着用し、トイレを離れてからしっかりと手指消毒することが、現状は最も有効性の高い予防法であるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36