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2024.02.26

高齢者必見!植物性タンパク質が健康に与えるいい影響【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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健康を維持するのに必要不可欠なタンパク質は、量だけでなく質を見直すことも大切なのだとか。

今回ご紹介するのは、the American Journal of Clinical Nutrition誌に、2024年1月17日付で掲載された、タンパク質の摂取量と健康との関係についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

高齢者に必要不可欠なタンパク質

高齢になると、筋肉が萎縮して細くなり、筋力が低下して転倒などのリスクが高まります。これをサルコペニアと呼んでいます。

タンパク質を多く摂ることで、その予防に繋がり、健康寿命が延びることを示唆するデータがあり、良質のタンパク質を積極的に摂ることが、高齢者において推奨されています。ただ、たとえば牛肉のような赤身肉を多く摂ることは、生活習慣病の増加に繋がることを示唆する報告もあります。乳製品の摂取も議論のあるところです。

つまり、単純にタンパク質を多く摂れば良いのではなく、その組成に配慮する必要がある訳です。また、高齢者がタンパク質を多く摂っても、それがそのまま筋肉になる訳ではありません。高齢になればタンパク質を造る力や利用する力もまた、低下することが想定されるからです。

その意味ではもう少し前の年代、たとえば60歳未満くらいの時期にタンパク質を多く摂ること、それも赤身肉のような動物性タンパク質に偏らない、バランスの取れた摂取を行うことが、その後の健康状態に、最も有効に働くと想定されます。

しかし、実際にはそうした観点から、タンパク質の摂取の与える影響を検証した疫学データは、これまであまり存在していませんでした。

タンパク質の摂取量と健康寿命の関係を調査

そこで今回の研究では、アメリカで女性看護師を対象とした、有名な大規模疫学研究のデータを活用して、60歳未満の時期におけるタンパク質の摂取量が、その後の健康長寿に与える影響を、タンパク質の組成を含めて比較検証しています。

1984年の登録時に60歳未満で、糖尿病や癌、心筋梗塞などの慢性の病気の既往がない、トータル48762名の女性を対象として、その後2016年までの長期の健康観察を施行。2016年の時点でも癌、糖尿病などの持病がなく、生活を介助なく送れて、認知症や精神疾患もない状態を健康な老化と定義しています。

タンパク質は魚や肉などの動物性タンパク質と、豆類や野菜、穀類など由来の植物性タンパク質、そして牛乳やチーズなどの乳製品に分けて検証しています。

その結果、タンパク質の摂取量が多いほど、健康な老化を獲得する可能性が高まっていました。具体的にはカロリーの3%、摂取する総タンパク量が増加すると、健康な老化の確率は5%(95%CI:1.01から1.10)、それが動物性タンパク質の場合は7%(95%CI:1.02から1.11)、乳製品のタンパク質の場合は14%(95%CI:1.06から1.23)、植物性タンパク質の場合は38%(95%CI:1.24から1.54)、それぞれ有意に高くなっていました。

つまり、中年期にタンパク質、特に植物性タンパク質を多く摂ることが、その後の健康長寿に大きな影響を与える、という結果です。

健康に年を重ねたいなら植物性タンパク質を

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寝たきりにも認知症にもなりたくないなら、植物性タンパク質を多く摂る食生活を継続することが、科学的には最も効率的な予防法、という言い方が出来そうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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