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2022.08.11

健康効果が期待できる「運動後のサウナ習慣」【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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暑いサウナと冷たい水風呂。繰り返し入ることで、スッキリ爽快な「ととのう」感覚が味わえるサウナは、今ビジネスパーソンにも人気ですよね。

今回ご紹介するのは、American Journal of Physiology誌に、2022年7月4日掲載された、運動とサウナを組み合わせた健康効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

入浴法による健康効果の違いとは?

入浴は世界中において、古くから好まれている生活習慣で、皮膚などの清潔を保つと共にその温熱効果により気分をリラックスし、血流を一時的にせよ高めるという効果があります。

より長期的に入浴習慣に健康面での効果があるかどうか、と言う点については、現時点であまり明確なことが分かっていません。

一部には体温を上昇させることにより、ヒートショックプロテインを増やし、免疫を活性化させる、というような知見もありますが、それは仮説の域を出ないように思います。

入浴法により健康効果に違いがあるのではないか、という見解も以前からあります。

日本で行われているような、首まで熱い湯に浸かる全身浴は、血圧や脈拍に与える影響が大きく、入浴中の突然死に繋がるリスクが高い、という側面があるからです。

サウナは健康にいいのか?

フィンランドはサウナ発症の地で、比較的低温のサウナが一般的な入浴法として普及しています。

サウナというのは湯船に浸からないために、純粋の温熱効果のみが得られるので、全身浴と比較してより健康に利する可能性があるのです。

実際これまでに大規模なフィンランドの観察研究において、サウナの心血管疾患予防効果や肺炎予防効果などが認められ、論文化されています。

サウナと運動を組み合わせた健康効果を検証

今回の研究は矢張りフィンランドにおいて、年齢が30から64歳で運動は1週間に30分未満しかしておらず、高コレステロールやコレステロール上昇など、1つ以上の心血管疾患リスクのある一般住民47名を、くじ引きで3つの群に分けると、第1群は通常の生活を続け、第2群は週に3回の1時間の運動を指導され、第3群は運動後に15分のサウナ浴を併用して、8週間持続した前後で、体組成や心肺機能、血圧やコレステロールなどのチェックを施行します。

その結果、運動のみの群でも心肺機能は向上し、体脂肪は減少しましたが、血圧やコレステロールの低下は確認されませんでした。その一方で、運動とサウナの併用群では、心肺機能の向上はより大きく、血圧とコレステロールは低下を示していました。

運動とサウナの併用で健康効果が期待できる

これはまだ短期間の少人数での検証ですから、これをもってサウナと運動の併用が動脈硬化の予防に有効、とまでは言えませんが、通常の入浴では得られないような健康効果が、運動とサウナ浴との併用で認められたことは非常に興味深く、今後より詳細な検証を期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36