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2023.06.30

外来血圧と家庭血圧、どちらが有効?スペインの最新研究【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ヘルスケア家電等の普及により、家庭でも気軽に血圧測定ができる近年、血圧手帳やヘルスケアアプリ等で毎日の血圧を記録している方も多いのではないでしょうか。

今回ご紹介するのは、Lancet誌に2023年5月5日ウェブ掲載された、24時間血圧計の有効性についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

24時間血圧測定するのはハードルが高い?

24時間血圧計というのは、携帯型の血圧計を身体に装着し、1日もしくは数日の血圧を、24時間持続的に測定する医療機器です。

スマートウォッチなどを活用した、簡易的な血圧測定もあり、その測定値が正確なものであれば、より24時間血圧測定は広がりを見せると思うのですが、現状ではマンシェットを腕に巻き付けて、それが時間毎に締め付けられる、というようなタイプが一般的で、そのため装着すると特に夜間はかなりストレスが掛かるので、それがこうした測定のハードルを、高いものにしている部分はあります。

現状高血圧についての多くの臨床試験において、その指標とされているのは、外来受診時に医療機関の外来で測定された血圧値です。

しかしこうした外来血圧は、その測定は正確である一方で、その患者さんの1日の血圧の推移を、標準化しているとは言い難いところがあります。その典型的な例は所謂「白衣高血圧」で、外来では緊張した状態で測定するために、自宅で測定した自己測定の数値とは、かけ離れた高い血圧値を示すことをそう呼んでいます。

血圧という測定値が意味を持つのは、それが高いことが多くの病気のリスクを高め、その患者さんの予後とも関連を持っているからです。そしてその関連の強さは、医療機関の外来血圧よりも、24時間血圧測定から得られる血圧値の方が、より的確であるという考え方があり、それを実証するようなデータも存在しています。

しかし、そうしたデータの多くは、比較的精度の低い観察研究のデータで、患者さんを登録して経過をみるような本格的な臨床試験は、それほど多くはない上に、対象者の少ない小規模なデータばかりです。

スペインの24時間血圧測定患者のデータを検証

そこで今回の研究では、スペインの223か所のプライマリケアのクリニックにおいて、何らかの理由により24時間血圧測定を施行した、トータル59124名の患者を中間値で9.7年観察しています。その観察期間中に12.1%に当たる7174名が死亡しており、4.0%に当たる2361名は心筋梗塞など心血管疾患による死亡でした。

24時間血圧測定は、比較的古いタイプのアメリカのメーカーの機器により測定しています。昼間は20分に1回測定し、夜は30分に1回の測定が施行されています。極端な数値を除外して、それ以外の全ての数値の平均を算出します。

血圧の数値を5分割すると、一番低い群を除いた4群において、血圧の上昇は死亡リスクの上昇と相関していました。そして、クリニックの外来で測定した収縮期血圧より、24時間血圧を平均化した収縮期血圧の方が、より強く死亡リスクと相関していました。

また、診察室血圧のみが上昇している白衣高血圧は、有意な死亡リスクの増加とは関連していませんでした。

家庭血圧が診療に役立つ未来が来るかも

今回のこれまでで最も大規模な24時間血圧のデータからは、外来血圧よりも家庭血圧の重要性が明確に示されていて、今後より負担なく24時間血圧が正確に測定可能となれば、家庭血圧のみが健康指標として活用されるようになることも、そう遠い将来のことではなさそうです。

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参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36