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2020.06.18

新型コロナの無症候感染者は何日ウイルスを保持しているのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルスは、無症状でも感染力を持つのが怖いところ。
では、無症候感染者はどれくらいの期間、ウイルスを保持しているのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、BMC系列のCritical Care誌に2020年5月24日ウェブ掲載された、新型コロナウイルスの無症候性キャリアの、ウイルス保持期間を解析した短報です。

▼石原先生のブログはこちら

無症候性のキャリアが周囲に感染させるリスクはどれくらい?

新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の感染の厄介な点は、症状のない時期にも感染力があり、また完全に症状のない無症候性のキャリアからも、感染する可能性があることです。

密閉された空間や環境において、クルーズ船、病院、介護施設などで感染が拡大し、クラスターを形成するのは、こうした感染の特徴があるからです。

有効な治療薬や予防薬、ワクチンなどの開発が、まだ道半ばにある現状では、こうした感染の拡大に対しては、ステイホーム、社会的距離を保つなどの隔離対策以外、有効な対策のないのが実際です。

それでは、実際に無症候性のキャリアである人は、どのくらいの期間ウイルスを保持していて、周囲に感染するリスクがあるのでしょうか?

無症候性キャリアのウイルス保持期間を調査

今回の研究では中国において、複数の病院で新型コロナウイルス感染症の患者と接触した被験者を登録し、1~2日に1回のペースで呼吸器検体によるRT-PCR検査を繰り返し行い、それが陽性となった場合には、2回続けて陰性となるまで検査を繰り返します。

結果として24例の無症候性キャリアが抽出されました。

その結果、ウイルスに感染してからRT-PCR検査で陽性となり、最終的に2回陰性が確認されるまでの期間は、平均で22.0日(SD7.1)でした。RT-PCR検査で陽性となってから2回陰性となるまでの期間は、平均で7.9日(SD3.5)でした。

その結果を一覧にしたものがこちらです。

見づらいと思いますが、左の黒い三角マークがウイルスに感染した日を示し、ピンクのラインはウイルス保持期間を示します。
赤い丸が最初にRT-PCRで陽性が確認された日で、青い丸が2回続けて陰性が確認された日です。

ウイルス保持期間は人によってまちまち

これを見ると、検査で陽性になるまでに期間は、症状の出る人であれば潜伏期になる訳ですが、かなりまちまちであることが分かります。ケース2は一番ウイルス保持期間の長い事例で32日間となっています。

検査はタイミングによって、陽性にも陰性にもなる可能性があり、正確にどの時期に感染が成立するのかも分かりません。

たとえば、接触者に一斉にRT-PCR検査を行ったとして、その時に陰性であっても、翌日は陽性、ということがあり得るのです。おまけに症状は何もないのですから、手がかりがありません。

以前何度かお示ししたように、症状出現後概ね8日以降の時期においては、RT-PCR検査は陽性であっても、ウイルスに感染力があるという証拠は今のところありません。
ただ、ないとも言い切れない、というところがあるので、現状接触者への対応としては、検査も適宜しつつ、1ヶ月は隔離が必要、ということにならざるを得ない訳です。

現状の接触者への対応では、隔離が必須

今後ウイルスの動態についての知見が積み重ねられ、感染リスクの高い時期が絞り込めるようになれば、もう少し経済活動を邪魔しないような感染対策が可能となるのでしょうが、現状はそれは不可能であるのが、医療側から見た現実であるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36