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2024.01.22

歯磨きで予防できるのは虫歯や歯周病だけじゃない?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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歯磨きは虫歯や歯周病を予防し、口腔内を清潔に保つだけでなく病気の感染予防にも役立つかもしれません。

今回ご紹介するのは、JAMA Internal Medicine誌に、2023年12月18日付で掲載された、歯磨きの肺炎予防効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

院内感染の肺炎を予防するには?

肺炎は高齢者の死因としても、上位にランクされている感染症です。院内感染としてもその頻度が高く、入院の原因となった病気の治療には成功したものの、入院中に肺炎を合併して、そのために状態が悪化する、というような事態も稀ではありません。

院内感染で重要なことは、何よりその予防です。ただ、現状明確な院内肺炎の予防策は確立していません。口腔内の検出菌と肺炎の起因菌とが、同一であることが多いことが報告されていて、このことからは、口腔内を清浄に保つことが、肺炎予防に重要であることが示唆されます。

そのため、主にクロルヘキシジンという消毒剤を用いた、口腔ケアが試みられ、一定の院内肺炎予防効果が報告されていますが、その一方で生命予後を悪化させたとする報告もあって、その結果は一致しているとは言えません。

院内肺炎発症のリスクと歯磨きの関係を検証

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よりシンプルな口腔ケアとして、歯磨きの活用があります。ただ、その有効性はまだ院内肺炎予防としては、確立されたものではありません。

そこで今回の研究では、これまでの15の臨床研究に含まれる、トータルで10742名の臨床データをまとめて解析することで、この問題の検証を行っています。

その結果、毎日複数回の歯磨きの施行は、入院中の患者の院内肺炎発症のリスクを、33%(95%CI:0.56から0.81)有意に低下させ、集中治療室での死亡リスクも、19%(95%: 0.69から0.95)有意に低下させていました。

この院内肺炎罹患率の低下は、人工呼吸器を装着中の患者では、32%(95%:0.57から0.82)有意に認められたものの、人工呼吸器を装着していない患者のみの解析では、有意には認められませんでした。毎日の歯磨き回数については、1日2回とそれを超える回数での比較においては、有意な違いが認められませんでした。

歯磨きは院内肺炎の予防に有効

このように、1日複数回の歯磨きを施行することにより、院内肺炎の予防に一定の有効性が確認されました。この予防効果は人工呼吸器を装着している患者において専ら認められ、1日の歯磨き回数は2回が妥当と考えられました。

歯磨きによる口腔ケアは、特に肺炎リスクの高い入院中の患者においては、有効な予防法と考えて良いようです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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