メニュー

2023.10.23

帯状疱疹や肺炎球菌などのワクチンには認知症予防効果がある?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

Adobe Stock

Adobe Stock

高齢者が受ける様々なワクチンには、感染症を予防する効果に加えて、認知症を予防することができるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、Journal of Alzheimer's Disease誌に2023年8月7日掲載された、成人が接種するワクチンの、認知症リスクとの関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

感染症予防のワクチンが認知症予防にもつながる?

アルツハイマー型認知症の病因については、色々な仮説がありますが、その1つとして細菌やウイルス、真菌などによる感染症が、脳神経系組織の炎症を来し、それが発症の誘因となっているのではないか、という考え方があります。

実際に複数の感染症の罹患歴と、アルツハイマー型認知症の発症との間に、一定の関連があったとする報告もあります。仮に感染症が認知症の誘因であるとすると、感染を予防することが認知症の予防にも繋がる可能性があります。

それでは現行高齢者に推奨されているワクチンの接種に、認知症の予防効果はあるのでしょうか?

帯状疱疹や肺炎球菌等のワクチン接種と認知症のリスクを検証

今回の検証はアメリカの医療データを活用して、アメリカで高齢者に推奨されている、3種類のワクチンの接種と、その後の認知症発症リスクとの関連を比較検証しているものです。

その対象となっているワクチンは、Td(破傷風とジフテリアの2種混合)と、Tdap(破傷風、ジフテリア、百日咳の3種混合)ワクチン、帯状疱疹予防ワクチン、肺炎球菌ワクチンの3種類です。

登録の時点で65歳以上で、過去2年間に認知症と診断されていない、トータル1651991人のデータを解析したところ、2種混合もしくは3種混合ワクチンの接種は、その後のアルツハイマー型認知症のリスクを、30%(95%CI:0.68から0.72)、帯状疱疹予防ワクチンの接種は、25%(95%CI:0.73から0.76)、肺炎球菌ワクチンの接種は、27%(95%CI:0.71から0.74)、それぞれ有意に低下させていました。

複数のワクチンで認知症予防効果が認められた

Adobe Stock

Adobe Stock

こうしたワクチンを接種している高齢者は、他の健康リスクにも敏感で、健康への意識も高いと想定されるため、そうしたバイアスの影響も考えられますが、複数のワクチンに同等の認知症予防効果があるとする、今回のデータは非常に興味深く、今後のより詳細な検証にも期待をしたいと思います。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

あわせて読みたい