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2023.04.18

コーヒーは、飲んですぐに健康への影響があるか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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健康飲料として最近話題になることも多いコーヒーですが、カフェインが及ぼす短期的な身体への影響も無視できません。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2023年3月23日ウェブ掲載された、コーヒーの急性の健康効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

コーヒーは、飲んですぐに健康へ影響を及ぼすか?

コーヒーを1日3から4杯程度まで飲むという習慣が、糖尿病や心血管疾患、肝臓病などのリスクを低下させ、総死亡のリスクも最大で2から3割程度低下させるという知見は、これまでの多くの疫学データで実証されている事実です。

しかし、これはそうした習慣が影響しているということで、コーヒーを飲んだ場合の急性の効果を確認している、という訳ではありません。

コーヒーには交感神経を刺激する作用のあるカフェインが含まれていて、それが心臓に負荷を掛けて、不整脈などが増えるのではないか、という指摘があります。

ただ、脈拍や不整脈などが増えたとする研究結果は、主に大量のカフェインを摂取した実験によるもので、実際に嗜好品として飲む程度の使用により、どの程度の影響があるかについてのデータは限られています。

カフェインが不整脈等を起こすリスクを検証

今回の研究はアメリカにおいて、18歳以上の健康な100名の一般住民に、カフェイン入りのコーヒーを自由に飲んでもらった場合と、カフェインを含む飲み物を原則中止してもらった場合を、それぞれ14日ずつ施行して、その間の不整脈の状態は睡眠時間、歩数などの健康情報を連続的に計測して、その違いを比較しているものです。

その結果、ノンカフェインの飲み物を飲んでいても、カフェインの入ったコーヒーを飲んでいても、上室性期外収縮という不整脈の頻度には、有意な差は認められませんでした。

一方で心室性期外収縮のリスクは、ノンカフェインと比較してカフェイン入りのコーヒーでは、1.51倍(95%CI:1.18から1.94)と有意に高く、1日の歩数は平均で1058歩多く、睡眠時間は平均で36分短くなっていました。

嗜好品として飲む程度なら健康上に影響なし

つまり、カフェイン入りのコーヒーを飲むことにより、心室性の不整脈はやや増加し、日中の活動性はやや増加、夜の睡眠時間はやや短くなる、という傾向が認められました。

ただ、これはいずれも極僅かな変化で、特に心臓に持病などがない人であれば、カフェイン入りのコーヒーは、特に健康上の問題なく飲むことは可能であると、そう考えて良いようです。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36