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2024.01.12

寝不足の方必見!心血管疾患を予防する週末の寝だめ【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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「明日は休日だから、朝はゆっくり寝ていよう」と、休日は睡眠時間が長くなる方も多いはず。この寝だめは健康にどのような影響を与えるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、Sleep Health誌に2023年11月23日付で掲載された、キャッチアップ睡眠(寝だめ)の健康効果についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

寝不足の方がよくやる、週末の寝だめ

睡眠というのは食事や運動と並んで、健康に欠かせない生活習慣の1つです。

特に睡眠時間が短いことは、心臓病や脳卒中などの心血管疾患、認知症、うつ病など多くの病気のリスクになることが分かっていて、健康寿命にも悪影響を与える因子です。

そのためアメリカの睡眠関連の専門学会では、健康のために毎日の睡眠時間を、7時間以上にすることを推奨しています。(※2)

しかし、実際には多くの日本人が、もっと短い睡眠時間で生活をしています。そしてそうした寝不足の日本人が、睡眠不足の解消のために、しばしば行っている習慣が、週末や休日の寝だめです。

「休みの日は昼までゆっくり寝ていた」という、休みの日にありがちな習慣が寝だめです。医学用語としては、キャッチアップ睡眠(catch-up sleep)、という言い方が一般的で、上記論文ではウィークデイの睡眠時間の平均より、週末の睡眠時間が1時間以上長いこととして定義されています。

寝だめは体感的には、睡眠不足の軽減に一定の効果があるように思えます。

それでは、週末に寝だめをすることで、睡眠不足のもたらす健康への悪影響を、抑制するような効果があるのでしょうか?

寝だめは健康にどんな影響をもたらすか?

今回の研究はアメリカにおいて、20歳以上の3400名の一般住民を対象とした、健康調査のデータを活用することで、週末のキャッチアップ睡眠が、その後の心血管疾患(心筋梗塞や脳卒中など)のリスクに与える影響を検証しています。

その結果、週末に1時間を超えるキャッチアップ睡眠を取ると、取らない場合と比較して、その後の心血管疾患のリスクが、63%(95%CI:0.23から0.58)有意に低下していました。

ただ、高血圧など関連する他の因子を考慮して解析すると、トータルにはキャッチアップ睡眠の心血管疾患予防効果は、有意なものではなくなりました。

一方でウィークデイの平均睡眠時間が6時間以下と、明らかな睡眠不足にある人に限定すると、関連する因子を考慮して解析しても、心血管疾患のリスクは66%(95%CI:0.17から0.65)有意に低下していました。

個々の心血管疾患毎で傾向をみると、狭心症、脳卒中、虚血性心疾患は、キャッチアップ睡眠の予防効果が認められた一方で、心不全と心臓発作については有意な予防効果は認められませんでした。

寝だめには一定の心血管疾患予防のひとつ

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このように、特に毎日6時間以下と、明確な睡眠不足にある人では、1時間以上の寝だめを休日にすることで、一定の心血管疾患予防効果が認められました。

これはまだ事実とまでは言えない知見ですが、日頃睡眠不足の人にとっては、休日に少なくとも1から2時間程度の寝だめをすることが、健康上の害になることはなく、睡眠不足を補う1つの方法として有効であると、そう考えて大きな間違いはなさそうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
© DeSC Healthcare,Inc.

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