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2017.03.30

元気に長生きする食事って?結局何を食べればいいの?【KenCoM監修医コラム】

KenCoM監修医・石原藤樹

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健康のために、なぜ食事が大切なの?

食生活は文化でもあり、何が正しいか一概には言えない

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健康のためにどのくらい食事が大切なのでしょうか?いきなりその質問を患者さんから診察室でされて、的確に答えられるような医者は、あまりいないと思います。

人間が果たして何を食べるべき生き物なのか、というのは解決されていない問題です。昔の日本人と今の日本人とで食べているものはまるで違うと思いますし、世界の地域によっても食べているものは大きく違っています。このように食生活というのは人間の文化の1つでもあるので、それが正しいとか間違っているとかと言うことは、簡単には出来ないことなのです。

食事の偏りを修正することで、病気を減らせる

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それでも、はっきりと分かっていることもあります。
日本の特に寒い地域では、保存の効く塩分の強い食事が好んで食べられていました。そして、そうした地域の脳卒中の患者さんの数はとても多かったのです。第二次大戦後になって、血圧を簡単に測ることが可能になり、高血圧の患者さんが多いことも明らかになりました。塩分が多いと血圧が高くなることは良く知られていましたから、塩分を沢山摂ることで血圧が上がり、それが脳卒中を引き起こしていることが想定されました。

そこで塩分を減らすことを積極的に指導することが始まり、高血圧の患者さんを薬で治療することも始まりました。すると、その後劇的に脳卒中は減少したのです。このように、食事の成分の量によっては、それが健康上の大きな問題となり、そうした食事の偏りを修正することにより、病気を減らし健康になることが確認されているのです。

2017年のJAMAという医学誌に、アメリカでの食事の成分と健康との関係を調査した、非常に大規模な研究の結果が報告されています。(参考文献①)それによると、心臓病、脳卒中、糖尿病などによる死亡の原因のうち、その45パーセント余りは食事の偏りが原因だった、という結果になっています。この食事の偏りで最も影響が大きかったのはやはり塩分で、死亡原因の1割弱は、塩分の過剰が原因と推定されています。このように、実は食事の健康に与える影響は非常に大きいのです。

不摂生な食事をしているとどうなるの?

高血圧・胃がん・脳卒中や心臓病・糖尿病のリスクが上がる

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食事の偏りは多くの病気の原因となります。塩分が多いと高血圧になりやすく、はっきりデータがあるのは男性のみですが、胃がんが多くなることが分かっています。野菜や果物が不足していると、複数の種類のがんが増え、脳卒中や心臓病も増えることが報告されています。糖分を多く含む清涼飲料水を飲む習慣のある人は、糖尿病や心臓病、脳卒中の危険性が高くなります。ソーセージやサラミなどの加工肉を多く摂ると、これも複数のがんや心臓病、脳卒中などの危険が増し、寿命も短くなるという複数の報告があります。

このように多くの食事の偏りが、その後の病気の発生に繋がっているのです。

健康を維持する3つの具体的な食事法

地中海式ダイエットで心筋梗塞・脳卒中のリスクが3割ダウン

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過去から現在に至るまで、さまざまな健康のための食事療法が考案されています。
その中で、糖尿病や心臓病、脳卒中などの危険性を減らし、健康寿命にも良い影響を与えることがほぼ確実な食事のパターンが3種類あります。

それが、地中海ダイエットとDASH(ダッシュ)食と代替健康食指数スコアによる健康食です。
地中海ダイエットというのは、ギリシャなどの地中海地方の伝統食で、オリーブオイルとナッツを沢山摂ることがその特徴です。2013年のニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシンという医学誌に、その予防効果のデータが報告されています。(参考文献②)これによると通常の食事と比較して、オリーブオイルやナッツをより多く摂る地中海ダイエットを行うと、心筋梗塞や脳卒中の危険性が、3割くらい低下した、という結果になっています。

DASH食・代替健康食指数スコアによる健康食

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DASH食というのは、アメリカで研究開発された、高血圧の予防と改善のための食事です。飽和脂肪酸(バターやラードなど)とコレステロールを減らし、野菜や果物を増やして蛋白質はバランス良く摂取する、というのがその特徴です。

代替健康食指数スコアというのは、一番耳慣れない用語ですが、これもアメリカで研究開発されたもので、食品をプラスとマイナスで数値化して、そのトータルが大きいほど健康的であると判断するものです。野菜や果物は増やし、精製していない全粒穀物の比率も増やし、赤身の肉や加工肉は減らす、というような特徴があります。

3種の食事いずれも糖尿病を予防

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2012年のアーカイブス・オブ・インターナル・メディシンという医学誌に、この3種類の食事パターンを比較した論文が掲載されています。(参考文献③)それによると、3種類の食事パターンのいずれもが、妊娠中に血糖が上昇した女性の、その後の糖尿病の危険性を40パーセント以上予防していました。これはこうした食事が糖尿病の予防になることを示しています。

この3種類の食事療法は、野菜や果物、豆類やナッツを多く摂る、赤身の肉(牛肉や豚肉など)や加工肉(ソーセージやサラミなど)を減らす、塩分を摂り過ぎない、バターやラードなどの飽和脂肪酸を減らし、オリーブオイルや青味の魚の脂などの不飽和脂肪酸を多く摂る、穀類は白米ではなく玄米など、精製していないものを多く摂るなど、共通の特徴を持っていて、これが今の時点での、健康食の必要条件と、考えるのが良いようです。

その細かい量や配分については、栄養士や医師にご相談ください。
皆さんも健康のために、食生活の改善に心を配って下さい。

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参考文献

① Micha R, Penalvo JL, Cudhea F, et al. Association between dietary factors and mortality from heart disease, stroke, and type 2 diabetes in the United States. JAMA. 2017 Mar 7; 317(9): 912-924.

② Estruch R, Ros E, Salas-Salvado J, et al. Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet. N Engl J Med. 2013 Apr 4; 368(14): 1279-90.

③ Tobias DK, Hu FB, Chavarro J, et al. Healthful dietary patterns and type 2 diabetes mellitus risk among women with a history of gestational diabetes mellitus. Arch Intern Med. 2012 Nov 12; 172(20): 1566-72.

<著者プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36