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2023.09.15

アルツハイマー型認知症の新薬、ドナネマブの有効性は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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最近アルツハイマー型認知症の画期的な新薬として、「レカネマブ」という新薬が承認されたと話題になりました。同じようなメカニズムの薬は他にもあるようですが、その有効性はどうなのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2023年7月17日ウェブ掲載された、認知症の新薬の臨床試験結果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

話題になったレカネマブと同様の新薬、ドナネマブ

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アルツハイマー型認知症の新薬としては、エーザイとバイオジェン社が開発したレカネマブという新薬が、こうした薬剤として初めてアメリカのFDAで承認され、大きな話題となりました。

それについては以前記事にしています。

今回のドナネマブという薬剤は、脳のアミロイドプラークのみに発現している、不溶性のβアミロイド蛋白に対するIgG抗体です。従って、レカネマブとはターゲットの蛋白質が若干異なりますが、ほぼ同等の薬という言い方が出来るのです。

世界8か国でドナネマブの有効性を調査

今回の第3相臨床試験においては、世界8か国の277の専門施設において、軽度の認知機能低下を伴う軽度のアルツハイマー型認知症の患者、トータル1736名をくじ引きで2つの群に分けると、本人にも主治医にも分からないように、一方はドナネマブを4週間に一度静脈注射で使用し、もう一方は偽の注射を同様に使用して、72週間の経過を観察としています。

その結果、認知機能と日常生活機能の両指標において、ドナネマブの治療は認知症の進行を 有意に低下させていました。有害事象についてはこれまでのアミロイド除去薬で見られている、脳浮腫などの異常が治療群の24.0%(偽注射群では1.9%)、微小出血などの異常が治療群の19.7%(偽注射群では7.4%)で、認められました。

有害事象は認められるものの、認知症改善に役立つ可能性大

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今回の結果はレカネマブの臨床試験とほぼ同等のもので、対象がより軽症である点などに少し違いがあり、脳浮腫などの有害事象はやや多いという印象はあります。

このように、これまでとは異なるメカニズムで、脳の異常蛋白の沈着自体を、改善する可能性のある薬剤が続けて登場したことは、認知症治療の今後に、期待を持たせるものであることは間違いがありませんが、その安全性を含めた患者さんの予後については、今後も慎重に検証する必要がありそうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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