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2023.11.27

実は新型コロナ以外にもある!感染症後の後遺症について【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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風邪やインフルエンザ等の感染症に罹った後、しばらく体調不良が続くと言うことはありませんか?これは新型コロナで有名になった「感染症罹患後の後遺症」の一種かもしれません。

今回ご紹介するのは、Lancet系のeClinicalMedicine誌に、2023年10月6日付で掲載された、通常の感冒後遺症を、新型コロナ後遺症と比較した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナ以外の感染症にも後遺症はあるのか?

COVID-19後遺症については、これまでも何度も記事にしています。

新型コロナウイルス感染症の罹患後に、体調不良が長期間持続することは以前より指摘されていて、その呼び名も定義も、必ずしも統一されていませんが、概ね感染に罹患後3か以上持続する症状で、それにより日常生活や仕事などの社会生活に、一定の制限が必要となったり困難が生じる場合に、COVID-19後遺症や新型コロナ後遺症、COVID-19罹患後症候群やロングCOVID、などの名称が使用されています。

その症状も数多く報告されていますが、報告の多いものでは大きく3つに分かれるというのが、今の一般的な考え方です。

その3つというのは、
①咳や痰がらみ、息切れなどの呼吸器症状
②感情の変化や身体の痛みなどを伴う、全身の倦怠感
③物忘れや集中力低下などの認知機能障害
の3種類です。
他に味覚嗅覚障害がありますが、これは持続することはあるものの、他のCOVID-19後遺症とは別に考えることが多いようです。

さて、新型コロナに後遺症のあることは間違いがありませんが、新型コロナ以外の通常の感冒症候群の罹患後にも、同様の体調不良のあることは、臨床をしている医師なら、誰でも経験のあることだと思います。

「風邪が半年経っても治らない」と言われたり、「だるさや熱っぽい感じがいつまで経っても良くならない」、というような訴えは、外来では毎日聞く性質のものであるからです。

しかし、実際にそれはどのような性質のもので、新型コロナの後遺症とはどのような違いがあるのでしょうか?

そうした点を分析した研究は、これまであまりありませんでした。

コロナとそれ以外の感染症、罹患後の体調不良症状を解析

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今回の研究はイギリスにおいて、急性呼吸器感染症についての疫学研究のデータを活用して、感染後の体調不良の症状を、新型コロナとそれ以外に分けて解析したものです。

対象は元データから新型コロナワクチンは未接種の、10171名の一般住民を抽出したもので、そのうちの1311名は4週間以上前に新型コロナに感染し、472名は4週間以上前にそれ以外の急性呼吸器感染症に罹患していました。

新型コロナ後遺症に特徴的とされる、集中力低下、睡眠障害、動悸やめまいなどの症状は、新型コロナ以外の急性呼吸器感染症の罹患後においても、罹患していない人と比較して、有意に増加していました。

一方で味覚嗅覚障害と脱毛、関節痛や筋肉痛の症状に関しては、新型コロナ罹患後には増加していましたが、それ以外の呼吸器感染症の罹患後には、その増加は見られませんでした。

どの感染症にも睡眠障害等の後遺症はある

つまり、インフルエンザなど、新型コロナ以外の感染症の罹患後にも、新型コロナほど著明ではないものの、長期間持続する睡眠障害や集中力低下などの後遺症が認められ、症状の中では味覚嗅覚障害と脱毛、関節痛や筋肉痛については、新型コロナ後遺症以外ではあまり見られない、ということが分かりました。

今後は何故こうした現象が起こるのかの、メカニズムの解明と共に、その有効な治療が確立されることを期待したいと思います。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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