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2023.10.06

アルコールとの併用にリスクのある薬と飲酒習慣【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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普段から飲酒の習慣がある人が薬を飲むと薬の作用に影響があるのでしょうか?

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2023年9月14日付で掲載されたレターですが、アルコールとの併用にリスクのある薬の飲酒歴との関連についての内容です。

▼石原先生のブログはこちら

習慣的な飲酒による薬の相互作用

お酒は多くの薬との間で相互作用のあることが知られています。

有名なところでは、アセトアミノフェンという非常に安全性の高い解熱鎮痛薬が、大量もしくは持続的な飲酒により、肝臓への毒性を生じることが報告されています。また睡眠剤や抗不安薬、抗けいれん剤などの薬剤は、その鎮静作用が飲酒により増強して、危険な場合のあることが知られています。

こうした薬を、アルコール相互作用薬(Alcohol-Interactive Medications)と呼ぶことがあります。

こうした薬剤は、常習的な飲酒や大量飲酒時は原則として使用不可ですが、実際には個々の患者さんにそうした管理をすることは難しく、アルコールと薬を併用しているようなケースは、多いことが想定されます。

飲酒による薬の相互作用を検証

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今回の研究はアメリカにおいて、大規模な疫学データを解析することで、アルコール相互作用薬の使用と飲酒習慣との関連を検証しています。対象となっているアルコール相互作用薬は、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬や睡眠薬、抗けいれん剤、痛み止めのオピオイドの3種類です。

健康リスクの高い飲酒としては、一度に女性で4ドリンク以上、男性で5ドリンク以上の飲酒、もしくは週に女性で8ドリンク以上、男性で15ドリンク以上の飲酒習慣が適応されています。

この1ドリンクはアルコール10グラム程度(国により違いあり)で、日本酒1合、ビール中瓶1本が、2ドリンク程度というのは大体の目安です。

1種類以上のアルコール相互作用薬を使用している、20歳以上の2141名を対象として解析したところ、前年に健康リスクの高い飲酒習慣があったのは、ベンゾジアゼピン系作動薬の使用群で28.6%、オピオイド使用群で17.5%、抗けいれん剤使用群で20.2%、2種類以上の併用群で15.3%に及んでいました。

また前月の健康リスクの高い過量飲酒も、ベンゾジアゼピン系作動薬の使用群で16.9%、オピオイド使用群で9.2%、抗けいれん剤使用群で12.3%、2種類以上の併用群で8.2%に認められました。

薬の安全利用が求められる

このようにアルコールとの併用が危険な薬が、実際には多くの事例で過度の飲酒習慣のある患者に処方されており、こうした状況は日本においても同様であると考えられます。

今後どのようにしてこうした事例を減らしてゆくべきなのか、早急な議論が必要であるように思います。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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