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2022.07.20

流行中のオミクロン変異株とデルタクロン株、ワクチン等による免疫の有効性は?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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オミクロン株が変異を繰り返し、また感染者が急増しています。ワクチン摂取や、以前に感染した時の免疫はどれくらい有効なのでしょうか。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2022年5月18日に掲載された解説記事ですが、オミクロン株のBA.3系統の変異株と、デルタクロン株の性質についての検証結果です。

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オミクロン変異株やデルタクロン株の特徴とは

オミクロン株は当初のBA.1系統から、BA.2、BA.3と次々と変異を繰り返して流行し、それ以前に流行したデルタ株とオミクロン株とが融合して、両者の性質の一部を併せ持った、通称デルタクロン株まで同定されています。

クリニックで採取した検体のゲノム解析でも、2〜3週間程度前の報告ですが、解析された事例の全てがBA.2系統となっています。(2022.6月時点)

ただ個別の変異株の性質については、まだそれほど明確なことが分かっていません。

元のコロナ株や現行ワクチンの免疫効果は限定的

今回の検証はアメリカにおいて、元の新型コロナウイルス株と比較した、BA.3系統とデルタクロン株の免疫的特徴を比較しているものです。

ファイザー・ビオンテック社もしくはモデルナ社製ワクチンを、2回接種してから3、4週後に採取された検体での検査では、元の新型コロナウイルス株(D614G変異株)への中和抗体価と比較して、BA.3系統に対する中和抗体は3.3分の1、デルタクロン株に対する中和抗体は44.7分の1しか、誘導はされませんでした。

つまり、元の新型コロナウイルスや現行のワクチン株による免疫は、オミクロン株の亜系統やデルタクロン株に対しては、かなり限定的な効果しかない、ということが推測されます。

デルタ株流行期の入院患者の検体を利用した検査では、元の新型コロナウイルス株に対する中和抗体価と比較して、オミクロン株のBA.3系統はほぼ同じ中和抗体価を維持していましたが、デルタクロン株に対する中和抗体価は137.8分の1しか誘導されませんでした。

オミクロン株の流行期の入院患者の検体を利用した検査では、元の新型コロナウイルス株に対する中和抗体価と比較して、オミクロン株のBA.3系統とデルタクロン株の中和抗体価は、ほぼ同等でした。

このように、オミクロン株のBA.3系統は、それ以前の株に対する免疫を回避するような傾向はなく、その一方でデルタクロン株に関しては、オミクロン株やデルタ株の免疫もあまり有効ではなく、それ以前の多くの変異株に対しても、抵抗性である可能性が高いと想定されました。

今後は今の状況に合わせたワクチンを

mRNAワクチンを複数回接種した場合の免疫は、元の新型コロナウイルスに感染した際の免疫より、遥かに強い免疫を誘導するため、確かにその後の変異株に対しても一定の有効性はあるのですが、オミクロン株以降の変異株に対する有効性はかなり低いもので、今後は今の状況に合わせたワクチンの導入が、急務であるように思います。

一方で変異株の中には性質がおとなしく、より通常感冒への移行を、期待させるものがある一方、免疫も逃避する傾向が強く感染力の強いものもあり、まだ楽観をするべき状況ではないように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36