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2022.11.04

症状別、薬の選び方。ドラッグストアの薬を賢く活用しよう!

kencom 公式ライター:森下千佳

©︎Rino

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頭痛、腰痛、腹痛、花粉症など、ちょっとした不調は、できれば自分で対処したいものですよね。ただ、ドラッグストアや薬局に足を運んだ時に似たような薬が並び、どれを選べば良いのかわからない、と困ったことはありませんか。

そこで今回の記事では、自分にあった市販薬(以下、OTC医薬品)の選び方のコツを症状別にご紹介します。教えていただいたのは、横浜市立大学医学群健康社会医学ユニット准教授(東京大学大学院薬学系研究科 客員准教授)の五十嵐中先生です。

五十嵐 中(いがらし あたる)先生

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横浜市立大学医学群健康社会医学ユニット 准教授
東京大学大学院薬学系研究科 客員准教授

【プロフィール】
2002年東京大学薬学部薬学科卒業。2008年東京大学大学院薬学系研究科博士後期課程修了。専門は薬剤経済学. 医療経済ガイドラインの作成・個別の医療技術の費用対効果評価・QOL評価指標の構築など、 多方面から意思決定の助けとなるデータの構築を続けてきた。
著書に『医療統計わかりません(東京図書, 2010)』『わかってきたかも医療統計(東京図書, 2012)』『薬剤経済わかりません(東京図書, 2014)』などがある。

OTC医薬品と医療用医薬品、同じ薬があるって知ってた?

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病院で医師に処方してもらう薬(以下、医療用医薬品)の方が効き目が良い、と思っている方も多いかと思いますが、必ずしもそうとは限りません。

もちろん抗生物質(抗菌薬)のように、処方箋がないと入手できない薬もありますが、OTC医薬品の中には、病院で処方されるものと全く同じ成分の薬が売られているケースがあります。

例えば、風邪や新型コロナワクチンの副反応を抑える際に処方される医療用医薬品、「カロナール(アセトアミノフェン)」です。これは、アセトアミノフェンという有効成分を含む、解熱鎮痛剤の商品名です。同様の成分を含むOTC医薬品がありますので、ドラッグストアへ行った際には注目してみてください。

この他、頭痛や生理痛の時に処方される医療用医薬品「ロキソニン(ロキソプロフェン)」や、花粉症の症状を抑える医療用医薬品「アレグラ(フェキソフェナジン塩酸塩)」は、同じ名称のOTC医薬品があり、有効成分の量なども全く同じものがあります。

OTC医薬品と医療用医薬品には、それほど大差がない薬が実はたくさんあるのです。それでは、もう少し詳しく症状別の薬について解説していきます。

▼病院の薬とドラックストアの薬の違いはこちらから

頭痛

頭痛にはいくつか種類があり、人によって痛みも異なります。まずは自分の頭痛がどのような症状なのかを観察し、適切に対処することが大切です。

激しい痛みや手足のしびれなどの症状が出た場合は、他の病気が原因の可能性があるため直ちに病院へ。

OTC医薬品が役立つケースは、精神的なストレスや、肩こりや目の疲れなど身体的なストレスによって引き起こされる緊張型頭痛や、風邪に伴う頭痛の場合です。ただ、普段から頻繁に頭痛が起きたり、薬を飲んでも症状が改善されない場合は、無理せず医師の診察を受けてください。

主な3つの成分を知って自分に合うものを

頭痛薬の鎮痛成分には、いくつか種類があります。主な3種類の成分の特徴を知って、ご自身の体に合ったものを選びましょう。

1:ロキソプロフェン

先述の通り、医療用医薬品・OTC医薬品ともに「ロキソニン」の有効成分です。解熱鎮痛薬として高い効果が期待できますが、胃腸障害の副作用リスクがあります。そのため、胃腸が弱い方や消化潰瘍の方は、服用には注意が必要です。「第一類医薬品」というカテゴリーに分類されていて、薬剤師がいる店でしか購入できません。

2:イブプロフェン

OTC医薬品の代表的な鎮痛成分で、様々な抗炎症・解熱・鎮痛薬に配合されている成分です。効果を発揮するまで比較的時間がかかりますが、ロキソプロフェンよりも効果の持続時間が少し長く、薬剤師が在籍していないドラッグストアでも購入することができます。

3:アセトアミノフェン

風邪の時や、新型コロナワクチンを打った際の解熱鎮痛剤としても処方される医療用医薬品「カロナール」の有効成分です。この成分は、ロキソプロフェンやイブプロフェンなどの鎮痛成分とは少し異なる仕組みで痛みを和らげます。鎮痛効果や炎症を抑える効果は穏やかですが、胃への負担がほとんどないという特徴を持っています。

胃の痛み

胃の痛みは、胃の粘膜に胃炎や潰瘍などの異常がある場合と、そうではない場合に分けることができます。胃の粘膜に異常が起こる主な原因は、ストレスや食べ過ぎ・飲み過ぎなどで、胃酸が過剰に出るとともに、胃粘液が減少して胃の粘膜を傷つけてしまうことがあげられます。

最近ストレスが溜まり食べすぎてしまった、アルコール度数の高いお酒をたくさん飲んだ、辛い料理を食べたなど、思い当たる原因をを思い出してみてください。

上記が原因の場合、胃酸分泌抑制薬(H2ブロッカー)が含まれる薬や、胃酸を中和する制酸剤を含む薬、胃粘液の分泌を促し胃粘膜の再生をする胃粘膜保護剤を選ぶか、迷った場合は薬剤師に詳しく説明をして選んでもらうと安心です。

また、総合胃腸薬を選ぶのもひとつの方法ですが、様々な成分が少しずつ配合されているため、軽い症状であれば効果は期待できますが、人によっては改善しない場合もあります。

1週間以上症状が続く、説明書に沿って薬を1箱飲んだが改善されない、激しい痛みがくり返し起こる場合は、他の原因も考えられるため、無理をせず医師の診察を受けてください。

胃に痛みを感じやすい場合は、自分に出やすい症状や、状況別に効果的な薬を見つけて常備しておくとよいでしょう。胃の痛みがよく起こる方の場合は、まだ年齢が若い場合であっても検診を受けてください。そして40代以降は、定期的な検診を受けるようにしましょう。

肩こり・腰痛

肩こりや腰痛も症状が強くない場合は、OTC医薬品やストレッチを取り入れることで改善が期待できます。痛みや炎症を抑える薬には、外用薬(塗り薬・湿布剤)と内服薬があります。

まず外用薬から試し、改善されない場合は内服薬を飲むのが、副作用の心配も少なくおすすめです。

湿布剤には、温湿布剤と冷湿布剤がありますが、急性の痛みには消炎効果のある「冷湿布剤」を、慢性の腰痛は血行を良くする「温湿布剤」を選ぶと良いとされています。どちらか判断つかない場合は、ご自身が気持ちいいと思える方を選んでみてください。

安静にしていても激しい痛みを感じるときや、1ヶ月以上、症状が改善しない場合は、早めに医師の診察を受けましょう。

花粉症

花粉症のOTC医薬品は非常に充実しているため、自分の症状にぴったりの薬を選べば、きちんと効果が得られます。

・即効性を期待するなら「第一世代抗ヒスタミン薬」

とにかく今出ている症状をすぐに治したいという場合は、第一世代抗ヒスタミン薬がおすすめです。特に鼻詰まりの症状に効果的です。しかし副作用として、強い眠気や口の渇きなどの症状がでる場合があるため注意しましょう。

・眠気などを抑えたいなら「第二世代抗ヒスタミン薬」

上記の副作用を改善するべくうまれたのが、第二世代抗ヒスタミン薬。現在の主流となっています。第一世代の抗ヒスタミン薬と比べ、眠気や口の渇きなどの副作用が出にくい工夫がなされています。

第一世代、第二世代の抗ヒスタミン薬といっても多くの商品があり、それぞれ特徴があります。選ぶ上で大切なのは、ご自身が期待する効果がしっかり出るものを見極めること。CMやパッケージなどのイメージで決めずに、薬に求める要望をはっきりさせてから選びましょう。

眠気が出にくいものや、1日1回の服用で済むもの、水なしで飲めるものなど、自分のライフスタイルに合わせて選んでみてください。

また、花粉症かどうかはっきりしない場合や、発熱や吐き気など全身症状が見られる場合、OTC医薬品を試したが改善されない、妊娠している可能性や妊娠・授乳中、18歳未満の方は医師の診断を受けましょう。

生理痛・歯の痛み

生理痛には、ロキソプロフェンやイブプロフェンが成分の薬を選ぶことが多いと思いますが、生理痛と併せて、頭痛、胃の痛み、吐き気や嘔吐、めまい、下痢などが生じる場合は、薬剤師に相談するなどして、症状に合う薬を選ぶようにしましょう。

また、薬を飲んでも痛みが緩和されない場合や、前回の生理と比べて痛みが強くなったり、出血量が増えるなど、痛みの程度や状況が変化した場合は、月経困難症などの病気の可能性もありますので、無理せず早めに医師の診察を受けてください。

歯痛には、どの痛み止めも大差なく効果を発揮しますが、あくまでも治療までのつなぎです。痛みが引いても、早めに歯科を受診するようにしましょう。

OTC医薬品を賢く活用するための3つの約束

薬は必ず、水で飲もう

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薬と薬、薬と飲み物や食べ物との組み合わせによっては、効果が強くでたり、反対に弱まったり、副作用が出る場合もあります。そのため薬を飲む前は、必ず添付されている説明書に目を通して、飲み方の注意点を確認しましょう。

例えば、コレステロールや血圧の薬は、グレープフルーツジュースと一緒に飲むと、効果が強く出たり、副作用が現れやすくなります。薬は必ず、水かぬるま湯で飲みましょう。

<控えてほしい飲み物>
・ジュース
・コーヒーやお茶
・牛乳
・アルコール

また、持病のある方など処方薬を飲んでいる場合は、OTC医薬品を購入する際に、医師や薬剤師に相談してください。

そして、症状を早く改善したいからといって、説明書の上限よりも薬の量を増やすのは危険です。また、薬を飲み忘れたからといって、次に飲むときに2回分の量を飲んではいけません。

かかりつけ薬剤師さんを見つけよう!

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薬局やドラッグストアに置いてある医薬品に関して、一番詳しいのは薬剤師です。薬を購入する際には、薬のプロフェッショナルである薬剤師に積極的に頼ってみましょう。

薬剤師が「どんな痛みですか?」「いつからですか?」「いつもどのような薬を使っていますか?」などと質問するのは、詳しく症状を尋ねつつ、他に処方されている薬との飲み合わせの問題がないかを判断するためです。

もっとも、自分が飲んでいる薬を全て説明することは難しいでしょう。そのため、お薬手帳を持参し相談すると、薬剤師もより適切なアドバイスができます。

理想は「かかりつけの薬剤師さん」を見つけること。かかりつけができれば、購入する薬が自分の体質や症状にあっているかのアドバイスをもらえるだけでなく、健康に関するアドバイスをもらえることもあります。病院以外に自分の健康のことを相談でき、気軽に頼れる場所ができるというのも安心です。

我慢せず病院へ行くのも大切

ここまで、OTC医薬品の取り入れ方について紹介してきましたが、医療機関で受診すべきかどうかの判断はどうしたらいいのでしょうか。kencom監修医でもお馴染みの石原藤樹先生に伺いました。

「普段から特に健康面で問題がなく、短期的な症状の場合や、慢性的な症状であっても検査をして問題がなく、医師からOTC医薬品でもよいと言われている場合は、OTC医薬品を使って様子をみるのは問題ありません。

ただ、OTC医薬品で症状が改善できるからといって、長期に渡り薬に頼るのはよくありません。定期検診をしておらず、頻繁に痛みなどがある場合や、OTC医薬品を1箱飲み切っても改善されない場合、症状が1週間以上続く場合などは医療機関を受診してください」

OTC医薬品を上手に活用しよう

もちろん医師でないと処方できない医療用医薬品がありますが、日々の諸症状についてはまずはOTC医薬品で様子をみるという選択肢を覚えておきましょう。

ただ、症状が改善できることがわかっても、OTC医薬品に頼りすぎてはいけません。ドラッグストアでは薬剤師に相談する、医療機関を受診した際は医師に相談や確認するなど、病気や薬に対して正しい知識と行動を心がけましょう。

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著者プロフィール

■森下千佳(もりした・ちか)
フリーエディター。お茶の水女子大学理学部卒。テレビ局に入社し、報道部記者として事件・事故を取材。女性ならではの目線で、取材先の言葉や見過ごされがちな出来事を引き出す事を得意とする。退社後、ニューヨークに移住。当時、日本ではなかなか手に入らなかったオーガニック商品を日本に届けるベンチャー企業の立ち上げに関わる。帰国後、子宮頸がん検診の啓発活動を手がける一般社団法人の理事を経て現職。一児の母。

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