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2023.09.24

社会保険料のキホン。会社員でも安くする手段はある?【健康とお金の最前線】

kencom公式:ファイナンシャルプランナー・山本美紀

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本連載『健康とお金の最前線』は、健康×お金にまつわるコラム。ファイナンシャルプランナー(CFP®)として活躍する、ライフプラン作成のプロである山本美紀さんに教えていただきます。

今回のテーマは“社会保険料”です。病気や失業、老後、介護、労災など、私たちの暮らしを支える社会保険制度を維持するための大切な資金源です。しかし、会社員の場合、天引きされているために、どのくらい社会保険料を支払っているのか知らなかったり、そもそも意識していない人も多いかもしれません。

今回は、社会保険料とは何か、私たちがどのくらいの金額を負担しているのかを見ていきましょう。

あなたは社会保険料をいくら支払っているか知ってますか?

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社会保険料には

・厚生年金保険
・健康保険
・介護保険
・雇用保険
・労災保険

この5種類があります。それぞれがどんな保険か、どれくらいの保険料を支払っているかを見てみましょう。

#1 老後のための“厚生年金保険”

厚生年金保険は、老後や障害、死亡などに備える年金の保険料で、国民年金に加算される年金です。そもそも日本の公的年金は2階建て。会社員が給与から天引きされて毎月支払っているのは、国民年金保険・厚生年金保険です。

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厚生年金保険を支払うことで、原則65歳以降に老齢基礎年金に上乗せして老齢厚生年金が支払われます。厚生年金は、社会保険適用事業所に勤める会社員や公務員が加入します。

また、短時間労働者であっても、厚生年金保険の被保険者数が101人以上の企業等で
 ・週の所定労働時間が20時間以上あること
 ・賃金の月額が8.8万円以上であること
 ・学生でないこと
を満たす場合は、加入対象となります。

厚生年金保険料率は18.3%

厚生年金保険料の計算は

標準報酬月額×厚生年金保険料率(18.3%)

で計算され、事業主と従業員が半分ずつ負担します。つまり給与から天引きされる保険料は、標準報酬月額(※1)×9.15%です。

※1 標準報酬月額とは、社会保険料の計算をしやすくするために、賃金を1~50の等級(厚生年金は1~32)に分けて表したもの。

基本的には、4月、5月、6月の給与支給額の平均をもとに、標準報酬月額を算出し、その年の9月から翌年8月まで適用されます。標準報酬の対象には、月給など基本給の他、役付手当、勤務地手当、家族手当、通勤手当、住宅手当、残業手当等、また現物支給も換算されます。賞与は年4回以上支給される場合に報酬に含まれます。

#2 病気やケガに備える“健康保険”

社会保険適用事業所に勤める会社員や公務員は、健康保険組合、協会けんぽ、共済組合などを保険者とする被用者保険に加入します。短時間労働者の加入条件は、厚生年金保険と同様です。

健康保険料率は10%(東京都・協会けんぽの場合)

健康保険料の計算は

標準報酬月額×保険料率

で計算され、事業主と従業員が半分ずつ負担します。

保険料率は、加入している健康保険組合や協会けんぽ、共済組合により異なります。例えば、協会けんぽに加入している場合(東京都)は10%なので、給与から天引きされる保険料は、標準報酬月額×5%となります。

#3 40歳以上が支払う“介護保険”

要介護、要支援認定を受けて介護サービスを利用するための保険料。40歳以上の健康保険に加入している人が対象です。

介護保険料の計算は1.82%(協会けんぽの場合)

標準報酬月額×保険料率

で計算され、事業主と従業員が半分ずつ負担します。保険料率は、加入している健康保険組合や協会けんぽ、共済組合により異なります。例えば、協会けんぽに加入している場合は1.82%なので、給与から天引きされる保険料は、標準報酬月額×0.91%となります。

#4 仕事ができない時に備える“雇用保険”

失業や育児休業時の手当に備えるための保険料です。企業に雇用されている従業員で、31日間以上の雇用契約、週20時間以上の労働時間、学生でないことの3つの条件を満たしてしていれば、正社員、パート、アルバイトなどの雇用形態に関係なく加入対象となります。

雇用保険料率は1.55%(一般事業の場合)

雇用保険料の計算は

毎月の給与支給額×雇用保険料率

で計算され、保険料率は、事業内容や年度により異なります。雇用保険については、事業主と従業員が折半ではなく、事業主の方が多く負担します。

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一般事業の場合、2023年4月から2024年3月の雇用保険両立は、事業主が0.95%、従業員が0.6%で、合計1.55%です。給与総額には、残業手当、通勤手当、賞与も含まれます。

#5 通勤・仕事中の病気やケガに備える“労災保険”

労災とは“労働者災害補償保険”の略で、労働者の業務中や通勤途中の傷病などに対して、必要な保険給付を受けられる保険です。パート、アルバイトなどの雇用形態に関わらず全従業員が加入対象です。

労災保険料率は0.25〜6.0%(事業によって異なる)

労災保険料率は、事業によって大きく異なります。例えば林業の場合は6%、金融業なら0.25%。また労災保険は、全額事業主負担なので、給与からの天引きはありません。

会社員でもできる!社会保険料を減らす方法

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給与から天引きされてしまう社会保険料ですが、少しの意識と工夫で保険料を削減することが可能です。

①4~6月の残業代を抑える

前述したように、保険料計算に使われる標準報酬月額は、基本的に4〜6月の給与支給額の平均をもとに算出され、1年間適用されます。残業代も標準報酬月額の対象となるため、4〜6月の残業代を低く抑えれば、保険料を抑えることができます。

②通勤手当を抑える

残業代と同様に、通勤手当も標準報酬月額の計算対象に含まれます。よって通勤手当の金額が高いと、支払う保険料も上がります。

通勤手当を抑えるためだけに、職場の近くに引っ越すというのは現実的ではないかもしれませんが、通勤手当の金額により支払う保険料も変わるということを知識として知っておくと良いかと思います。その他の手当についても同様です。

③企業型DCとDBを活用する

企業型確定拠出年金(DC)は、会社が社員に掛金を支払い、社員が金融商品を選んで運用を行う仕組みです。確定給付企業年金(DB)は、給付建て年金とも呼ばれ、運用リスクは企業が負い、年金資産を一括して運用する仕組みです。

ともに、拠出分の掛金は全額非課税になるため、社会保険料を算出する標準報酬月額が減少します。つまり、社会保険料の負担額も減ることになります。ただし、どちらの制度も会社が取り入れていない場合もあるため、すべての会社員が使える制度というわけではありません。

注意して!社会保険料の落とし穴

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社会保険料について、知っておいて欲しいことがあります。

iDeCOは社会保険料に影響しない

iDeCO(個人型確定拠出年金)で掛金は社会保険料控除の対象となり、節税につながります。一方で、厚生年金と国民健康保険は、先ほどご説明したように標準報酬月額を元に計算されており、4〜6月に支払った給与を元に計算されるのです。そのため、iDeCOで個人年金を積み立てしても社会保険料の削減にはなりません。

もちろん、節税メリットは高い制度で、老後のために備える個人年金資産が形成できます。制度を知った上で、自分にとって必要かどうか見極めましょう。

厚生年金保険料を削減したら、将来の年金受け取りが減るかも

厚生年金で受け取れる年金額は、保険料を納めた金額や期間によって変化します。つまり、支払う保険料が少なくなると、将来受け取れる年金額も少なくなってしまう場合があります。

年収500万円の会社員の場合、社会保険料の支払額は?

では実際にどれくらいの社会保険料を支払っているか見てみましょう。

注意:実際の計算額の詳細は、異なる場合があります

注意:実際の計算額の詳細は、異なる場合があります

年収500万円の会社員(協会けんぽ加入(東京都)・一般の事業)の場合、社会保険料の月額合計額は約6.5万円、年間で約78.8万円の社会保険料支払いが発生することになります。

今回シミュレーションしたケースでは、年収の約15%の社会保険料を支払っていることがわかります。また、労働者負担金額だけをまとめましたが、この他にも事業主の負担を加わえると、合計30%ほどになりますね。このようにあらためて計算してみると、報酬から、かなりの額が天引きされ、社会保険料の支払いを行なっていることがわかります。

給与明細のイメージ

給与明細のイメージ

支払った社会保険料額は、社会保険料控除として税金計算の際に、所得から差し引かれます。

まずは、自分の給与明細を見て、控除の項目をチェックして、どれくらいの社会保険料を支払っているかを確認するところから始めてみてください。

給与や暮らしに大きく関わる社会保険料について知識を深めよう

給与計算の際に、自動的に天引きされいる社会保険料。普段はあまり意識していないかもしれませんが、いざというときに私たちを手厚くサポートしてくれる重要な社会保険制度です。その大事な財源を私たちも負担しているのですから、正しく把握しておきたいですね。

社会保険料は、年度によって変化したり、年収によって変わりますので、自分が実際どのくらい負担しているのかを年に1回はチェックしてみてはいかがでしょうか。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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山本美紀(やまもと・みき)
ライフデザインオフィス【想-創】代表
ファイナンシャルプランナー(CFP®)、家計整理アドバイザー。家計相談やライフプラン作成の他、ママ向けのセミナーや講座を通じて、暮らしを豊かにするための情報発信をおこなっている。正社員、派遣社員、専業主婦、そして個人事業主とライフステージに合わせて働き方を変えてきた経験からのお金とキャリアプランのアドバイスが好評。

制作

文:山本美紀

※本記事は2023年9月時点での情報です。
※制度は変更する場合がありますので、利用する際には、最新情報の確認ください。

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