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2020.10.25

筋肉は命を救う。カラダの不調が付きまとう40代│深爪 Vol.2

コラムニスト:深爪

Twitterフォロワー数18万人を超える人気主婦コラムニスト、深爪さんをご存じでしょうか?

斜め上から真横からと、独自の目線で切り込む発言が多くの人を虜にしている人物です。著書『深爪式 声に出して読めない53の話』『深爪流 役に立ちそうで立たない少し役に立つ話』『立て板に泥水』他、オンラインサロンなど多方面で活躍されています。前回はドラマ半沢直樹について語っていただきましたが、今回はカラダの不調についてのお話しです。

▼前回のお話しはこちら

40代、いつもカラダの不調が付きまとう

ある日、ツイッターを眺めていたら「女性が元気なのは1か月に1週間しかない」という文言が目に飛び込んできた。

女性は、生理前、生理後、排卵時期などホルモンバランスの関係で心身ともに調子が崩れるので、元気な時期はそれを除いた1週間程度だというのだ。「そうそう!そうだよね!」と共感しかけたそのとき、ふと「ん?ちょっと待って。月に1週間も元気な日ある?」と思いなおした。

私は、40代に入ったあたりから、いつも身体のどこかに不調がある。

頭痛や肩こり、胃の不快感、原因不明のダルさなどが常に身体に付きまとっているので、朝からスッキリしているのは稀だ。そして、気が付くといつもイライラしている。慢性的な身体の不調はメンタルに大きく影響を及ぼすのだろう。

そういえば、コンビニの店員を怒鳴りつけたり、スーパーでネチネチとクレームを入れたりするのは大抵、オジサンやオバサンである。中高年がやたら怒りっぽいのはこの常態化した身体の不快感のせいなのかもしれない。

不調やイライラ…激ヤバな自分を回避したい

ご多分にもれず、私も些細なことですぐにブチ切れてしまう。

そこで、書店で目にした「感情的にならない本」というタイトルの書籍を手にしてみたのだが、副題の「不機嫌な人は幼稚に見える!」が目に入っただけで「うるせえよ」と思ってしまった。重症だ。このままでは、以前マツキヨで目撃したレジで期限切れのクーポンを出しながら「昨日までのだけど昨日までなんだから別にいいでしょ?1日くらいどうにかしなさいよ!」と詰め寄る激ヤバババアみたいになってしまう。

手遅れになる前に対策をしようと、夫に相談してみた。「体がダルくて仕方ない。イライラする。このままでは激ヤバババアになってしまう。どうしたらいいか」とこぼすと、「そういう時こそ思いっきり運動。運動すると大抵スッキリするし、万が一ダルさが残っても『運動したんだからダルいのは当たり前』と諦めがつく」と即答。その発想はなかった。

ラジオ体操を始めてみた

とりあえず、夫のアドバイスに従い運動を始めることにした。まずはラジオ体操である。

以前、肩が痛みで上がらなくなったときに、整形外科医に「いわゆる四十肩です。軽い運動やストレッチをしてください。ダルさや痛みが和らぎます。ラジオ体操がオススメですよ」と言われたのを思い出したのだ。

おあつらえ向きに、NHKでは毎朝「テレビ体操」なるものが放送されている。「テレビ体操」とは、Eテレで毎週月曜から日曜の午前6時25分から10分間放送されている番組だ(地域によって放送時間帯が異なる場合もあり)。番組オリジナルの「みんなの体操」やストレッチの後に、みなさんご存じ「ラジオ体操」で仕上げをする構成になっている。

1日たった10分体を動かすくらいで何が変わるのか。しかも「ラジオ体操」って。と半信半疑で始めたのだが、番組インストラクターの指示通りに体を動かすと意外にも「きっちり運動した感」を味わうことができた。ほんのり汗ばむほどである。

毎朝テレビに向かって体操をすること約2か月。体に変化が起きた。肩の痛みがほとんどなくなったのだ。鎮痛薬も効かなかったあの激痛が、よもや日々10分の体操で治るとは。それに、心なしかメンタルの調子もいい。

調べたところ、一定のリズムで有酸素運動を行うと「セロトニン」というホルモンが分泌されるらしい。セロトニンは気持ちを安定させ、ストレス解消や睡眠を促進する効果があるのだそうだ。

つまり「ラジオ体操」は四十肩改善のみならず、精神安定やストレス解消にはまさにうってつけの運動だったのである。

そして、ラジオ体操を終えた後は、任天堂の人気ゲーム「リングフィットアドベンチャー」をプレイする。リングフィットアドベンチャーは、スクワットや腹筋運動、ジョギングなどさまざまな筋トレや有酸素運動で敵を倒しながらファンタジー世界を冒険するゲームである。楽しく冒険を進めていくうちに自然に筋力がつくわ、贅肉が落ちるわのすぐれものだ。

お遊びだと舐めていのだが、これが想像以上にキツい。

特に、四つん這いになって左右の足を前後に素早く動かす「マウンテンクライマー」を行っているときには、「キツい」以外のことが考えられなくなる。他のことを考える余裕がなくなるので、身体の不調やダルさもその時だけは吹き飛んでしまう。そして、プレイをして大量の汗をかいたあとにシャワーを浴びると、あれほどダルかった心身がめちゃくちゃスッキリしていることに気づく。

夫のアドバイスは的確だったのだ。

「筋肉は裏切らない」どころか、それ以上?

ラジオ体操とリングフィットアドベンチャーを始めてまる1年、体重は減らずむしろ若干増えた感じもあるが、全裸で鏡の前に立つと明らかにシュッとしているのがわかる。「数字を見るな。鏡を見ろ」は正解だなとしみじみ思う。

また、運動を始めてからそれまでしんどかった駅の階段が楽々上がれるようになった。自覚はないが、だいぶ体力ついたのだろう。そしてなにより、落ち込んだりイライラしたりすることが少なくなった。

人生も後半戦に突入してから体調不良のせいで生きるのがツラすぎるあまり「医療の進歩で長生きできるようになったが、果たしてそれは幸福なのか。人類は50歳くらいで天寿を全うすべきではないのか」みたいなことを本気で考えていたが、最近は死にたくなったらとにかく筋トレをするようにしている。

身体に負荷を与えて強制的に頭をからっぽにする→汗をかく→シャワーを浴びる→スッキリ→気が付くと体が引き締まっている→生きてるって素晴らしい、の無限ループで乗り切るのだ。「筋肉は裏切らない」とよく言われるが、もしかすると、筋肉は命をも救うのかもしれないと思う今日このごろである。

著者プロフィール

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■深爪

コラムニスト/主婦。2012年11月にツイッターにアカウントを開設。独特な視点から繰り出すツイートが共感を呼び、またたく間にフォロワーが増え、その数18万人超(2020年10月現在)。主婦業の傍ら、執筆活動をしている。主な著書に「立て板に泥水」「深爪式 声に出して読めない53の話」「深爪流 役に立ちそうで立たない少し役に立つ話」(すべてKADOKAWA)。また、オンラインサロン「深爪の役に立ちそうで立たない少し役に立つオンラインサロン」でも活動中。芸能、ドラマ、人生、恋愛、エロと、執筆ジャンルは多様。

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