メニュー

2024.06.14

コーヒーを毎日飲めばメタボを抑制できるのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

コーヒーにさまざまな健康効果があることは有名ですが、どうやらメタボリックシンドロームにも効果が認められたようです。

今回ご紹介するのは、European Journal of Nutrition誌に、2024年5月4日付で掲載された、コーヒーの健康効果についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

コーヒーはメタボを抑制できるのか?

コーヒーの健康効果については、ほぼほぼ主だった論文には全て目を通しているので、取り立てて目新しさはないものですが、これまでのデータを更に補強するような性質のものです。

2012年のNew England…論文以降、コーヒーが健康に良い飲み物であるという見解は、世界的に確立したという感があります。(※2)ただ、メタボリックシンドロームとの関連、という点に限定すると、その進行を予防したとするデータがある一方で、無関係であったというデータもあって、その結論はまだ一致していません。

コーヒーや紅茶の摂取量とメタボの関係を調査

今回の研究は、米国国民健康栄養調査のデータを活用して、メタボリックシンドロームの重症度を示す、MetS zスコアという指標と、コーヒーや紅茶の摂取量との関連を検証しています。対象は14504名の一般住民です。この場合のメタボリックシンドロームは、血糖などの検査値は日本とほぼ同じですが、腹囲は海外基準を使用しているので違いがあります。

解析の結果、1日に3杯を超えてコーヒーを飲む習慣のある人は、メタボの重症度指標の低下と有意に関連していました。つまり、コーヒーを飲んでいる人は、メタボになり難いことを示唆する結果です。

メタボの病態に関連する個々の指標との関連で検証すると、毎日コーヒーを飲む習慣は、BMIや収縮期血圧の低下、インスリン抵抗性の指標の低下、中性脂肪の低下と、有意に関連していて、HDLコレステロールの増加とも有意に関連していました。紅茶を2から3杯飲む習慣も、メタボの重症化指標の低下と有意に関連していましたが、3杯を超える摂取は、逆に指標の悪化と関連していました。カフェインレスのコーヒーについては、メタボの進行予防効果は確認されませんでした。

コーヒーはメタボの進行予防にも効果有り

記事画像

このように、メタボの進行予防についても、コーヒーの一定の有効性が確認されました。ただ、メタボ自体均一の疾患という性質のものではないので、その有効性は、たとえば肝臓病に対しての効果などと比較して、あまり明瞭なものとは言えません。

カフェインレスのコーヒーや紅茶では、メタボへの有効性が明確ではなかった、という結果は興味深いのですが、その解釈はメタボ自体が複合的で曖昧さのある概念であることを考えると、「そうしたデータもある」という程度の理解に留めておくのが良いようです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
© DeSC Healthcare,Inc.

あわせて読みたい