メニュー

2020.04.24

新型コロナウイルスは動物にも感染するのか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

記事画像

世界中に猛威を振るう新型コロナウイルス。人間だけではなく、動物もこのウイルスに罹患するのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Science誌に2020年4月8日にウェブ掲載された、新型コロナウイルスの動物への感染感受性を検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

人間に身近な動物にもコロナウイルスは感染するか

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が、コウモリを宿主とするコロナウイルスに、非常に強い相同性を持っていることから、コウモリ由来のウイルスが変異したものではあることは、ほぼ間違いがありません。

ただ、それではコウモリから直接人に感染したのか、それとも何か他の動物を間に介して感染したのか、という点については明確ではありません。

今回の研究では、人間の多くのウイルスが感染するイタチ(フェレット)と、人間のペットである犬や猫、食べる機会の多い豚、鶏、七面鳥に、今回の新型コロナウイルスを実験的に感染させ、その動態を比較検証しています。

その結果、犬、豚、鶏、七面鳥については、その鼻腔にウイルスを感染させても、体内での増殖は殆ど認められませんでした。

つまり、犬、豚、鶏、七面鳥の体内では、今回の新型コロナウイルスは増えることが出来ないようです。

犬、豚、鶏、七面鳥は感染しなかったが、フェレットと猫には感染

一方でフェレットと猫は新型コロナウイルスに感染し、その体内でウイルスが増殖して、咳や発熱などの症状を出すことが確認されました。

フェレットについては、上気道ではウイルスは増殖していましたが、下気道での増殖は殆ど認められませんでした。

一方で猫では新型コロナウイルスは下気道でも増殖して肺炎を起こし、猫から猫に空気感染(飛沫核感染)することも確認されました。

つまり、猫は人間と同じか、それ以上に新型コロナウイルス感染に罹りやすく、証明はされていませんが、猫から人間への感染も起こることが同時に示唆されます。

今回の新型コロナウイルスが、その突起を体内のACE2に結合させて感染することは、皆さんもご存じの事実ですが、フェレットも猫も下気道にACE2が発現していて、その塩基配列は2塩基の違いしかないので、何故フェレットでは下気道感染が起こらないのか、というのは興味深い現象で、ひょっとするとそこに新型コロナウイルス克服のカギが、隠れているのかも知れません。

今後の研究結果に注目

いずれにしても猫が新型コロナウイルスの宿主となり、感染を拡大させる可能性がある、という知見は非常に重要なもので、今後このことが大きな問題となる可能性を秘めていると思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36