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2019.08.21

健康リスクがあるサプリメントとは【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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「筋肉をつけたい」「手軽に痩せたい」などの身体の悩み、手軽にサプリメントで解決できたらいいですよね。でも怪しげなサプリメントには健康被害も報告されています。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のJournal of Adolescent Health誌に掲載された、青少年の使用するサプリメントのリスクについての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

市販のサプリメントには怪しげなものもある

サプリメントというのは、そもそもは通常の食生活で、不足し易い栄養素や微量元素などの、補充として使用する製品の意味合いですが、今では病気の予防や健康の維持増進などのために、役立つという触れ込みの商品全てを指すようになっています。

そこには、ビタミン剤やグルコサミン、コンドロイチンなど、一定の有効性が科学的にも示されているものもありますが、体重減少効果や腸内洗浄効果、精力増進や筋力増加など、何の成分がどのように作用するのかも、明確ではないものも多くあります。
アメリカでは精力増進や腸内洗浄などの効能を謳ったものが多いようですが、日本ではダイエット効果や、全身倦怠感への効果などを謳ったものが多いように思います。

国内外を問わず問題となるのは、怪しげなサプリメントに限って、青少年が使用するケースが多いということです。

ビタミン剤と筋肉増強等のサプリメントの健康被害を比較

今回の研究は、アメリカのFDAに2004年から2015年に集積された、サプリメントの有害事象のうち、年齢が25歳以下に使用された977件を解析したものですが、ビタミン剤と比較して、筋力増強目的のサプリメントの健康被害のリスクは2.7倍(95%CI:1.9から4.0)となり、体重減少目的のサプリメントも2.6倍(95%CI:1.9から3.4)、エネルギー補給目的のサプリメントも2.6倍(95%CI:1.9から3.6)、精力増進目的のサプリメントも2.4倍(95%ci:1.3から4.3)、それぞれ有意に健康被害のリスクが増加していました。

青少年の利用は特に慎重に

このように一口にサプリメントと言っても、ビタミン剤と、筋力増強などの効能を謳ったサプリメントとは、全く別個のものと考える必要があり、特にその青少年の利用については、濫用に結び付かないような対応が必要であるように思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36