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2022.02.28

要注意!新型コロナ罹患後は心血管疾患リスクが増加する?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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今感染が拡大しているオミクロン株は比較的軽症が多いと言いますが、それでも油断はできません。新型コロナ罹患後に病気のリスクが増加する危険もあるのだそう。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Nature Medicine誌に、2022年2月7日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症罹患後の、心血管疾患リスクについての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナ罹患後にも心血管疾患のリスクがあるか

新型コロナウイルス感染症は、全身の血管に影響を与え、心筋梗塞などの動脈硬化性疾患のリスクを増加させる、というような報告は以前からあります。

ただ、その殆どは肺炎などで入院した事例を対象としていて軽症の事例を含む、全ての有症状の新型コロナウイルス感染症の罹患後に、そうしたリスクがあるかどうかについては、あまり明確なことが分かっていません。

感染者は心血管疾患の発症リスクの増加が認められた

今回の検証はアメリカの退役軍人を対象とした、健康保険データを活用したもので、トータル153760名の新型コロナウイルス感染症患者で、診断後30日以上の生存事例について、発症1年後までの心血管疾患発症リスクを、非感染のコントロールと比較しています。

その結果、発症後1年以内の脳卒中のリスクが1.52倍(95%CI:1.43から1.62)、心房細動のリスクが1.71倍(95%CI:1.64から1.79)、急性心筋梗塞のリスクが1.63倍(95%CI:1.51から1.75)、心不全のリスクが1.72倍(95%CI:1.65から1.80)など、対象とされた心血管疾患の多くで、非感染と比べて感染者では、発症リスクの有意な増加が確認されました。

このリスク増加は入院を要さない患者でも認められましたが、患者の重症度が高いほど、そのリスクも高い傾向が認められました。

軽症であっても要注意

このように、新型コロナウイルス感染症の罹患後には、比較的軽症であっても、心血管疾患のリスク増加が確認されていて、そのメカニズムや予防策について、今後早急に検証される必要がありそうです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36