2022.10.27
コーヒーを種類別に検証!その健康効果の差とは?【kencom監修医・最新研究レビュー】
近年その健康効果に注目が集まっているコーヒー。ですが、コーヒーのどの成分が健康にいいのかは未だ解明されていないようです。
今回ご紹介するのは、European Journal of Preventive Cardiology誌に、2022年9月27日ウェブ掲載された、コーヒーの種類とその健康効果の差を検証した論文です。
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未だ解明されていないコーヒーの健康成分
1日3から4杯程度までのコーヒーを飲む習慣が、心血管疾患や癌、糖尿病などのリスクを低下させ、生命予後にも良い影響を与えることは、これまでの多くの精度の高い疫学データにおいて、ほぼ立証されたと言って良い知見です。
コーヒーが健康に良い飲み物であるというのは、現在では科学的常識と言って過言ではないのです。
ただし…それがコーヒーのどのような成分によっているのか、という点についてはまだ明確な結論は出ていません。カフェインやその代謝産物の量と、健康効果が一致するとする研究は多くあり、この点からはコーヒーの健康効果の主体は、カフェインであると想定されます。
ただ、他にもカフェインを含む飲み物はありますが、コーヒーに匹敵するような健康効果は確認されていません。
また、レギュラーコーヒーでもカフェインレスやデカフェのコーヒーでも、その健康効果には差はなかったというデータもあり、このことからは、カフェイン以外の成分の方が、コーヒーの健康効果の主体ではないか、という考え方も成り立つのです。
コーヒーの健康効果を種類別に検証
今回のデータはイギリスの有名な大規模医療データである、UKバイオバンクのデータを活用して、コーヒーの健康効果を、レギュラーコーヒーとインスタントコーヒー、デカフェのコーヒーに分けて検証しています。
対象は449563名の一般住民で、年齢の中間値は58歳、観察期間は12.5±0.7年の大規模なものです。
デカフェを含む全てのコーヒーで健康効果が
その結果、3種類のコーヒー全てにおいて、心血管疾患のリスク低下が有意に認められました。コーヒー全体では、心血管疾患のリスク低下は1日5杯まで認められ、最もリスクが低下していたのは、1日2から3杯で11%(95%CI:0.86から0.91)でした。
また総死亡のリスクも1日5杯まで認められ、最もリスクが低下していたのは、1日2から3杯で14%(95%CI:0.83から0.89)、心血管疾患による死亡のリスク低下は、1日1杯が最も大きく、18%(95%CI:0.74から0.90)、有意に低下していました。
レギュラーコーヒーのみでみると、総死亡のリスクは1日2から3杯で最も大きく、27%(95%CI:0.69から0.78)有意に低下していて、心血管疾患による死亡のリスクは、1日4から5杯で最も大きく、35%(95%CI:0.69から0.78)有意に低下していました。
インスタントコーヒーのみでみると、総死亡のリスク低下は1日2から3杯で最も大きく、11%(95%CI:0.86から0.93)有意に低下していて、心血管疾患による死亡のリスクは、9%(95%CI:0.88から0.94)有意に低下していました。
デカフェのコーヒーのみでみると、総死亡のリスク低下は1日2から3杯で最も大きく、14%(95%CI:0.80から0.91)有意に低下していました。心血管疾患による死亡のリスク低下は、1日1から3杯で認められ1日1杯で最も大きく、26%(95%CI:0.61から0.89)有意に低下していました。
興味深いことに同時に検証された、心房細動を含む不整脈のリスクについては、レギュラーコーヒーとインスタントコーヒーでは、1日1から5杯の範囲で有意なリスク低下が認められましたが、デカフェのコーヒーではリスクの低下は認められませんでした。
カフェイン以外のコーヒー成分にも健康効果がある
データの解釈は難しいところがあるのですが、トータルにコーヒーに心血管疾患予防効果と、生命予後の改善効果のあることは、今回も疑う余地なく確認されています。総死亡のリスクでみると、レギュラーコーヒーと比較して、インスタントコーヒーとデカフェのコーヒーでは、その低下効果はやや低い傾向は認められます。
このことは、カフェインがコーヒーの健康効果において、一定の役割を示していることを示唆していますが、カフェイン抜きのコーヒーでも有効性は認められていて、これはクロロゲン酸など、カフェイン以外の成分にも、コーヒーの健康効果の理由はあることを示しているように思われます。
また、従来カフェインは不整脈のリスクを高めるのでは、と想定されることが多かったのですが、今回の検証ではデカフェ以外で、不整脈リスクの低下が認められていました。
さらに詳細な分析に期待
これまでのデータの多くは、コーヒーの健康効果はその種類によらない、というものだったので、今回の検証結果は非常に興味深く、今後より詳細な分析にも期待したいと思います。
▼参考文献
<著者/監修医プロフィール>
■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36