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2023.10.13

座る時間が多い高齢者は認知症になりやすい?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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デスクワークなどの普及で日常生活を座ったまま過ごすことが多い近年ですが、高齢者が座ったままだと認知機能に影響があるのでしょうか?

JAMA誌に2023年9月12日付で掲載された、高齢者の座っている時間の長さと、認知症リスクとの関連についての論文です。

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座りっぱなしの健康への影響

1日の多くの時間を座って過ごすことが、総死亡のリスクの増加や、糖尿病や癌や心血管疾患のリスクの増加に繋がることが、多くの疫学データにおいて示されています。つまり、座る時間が長いほど、健康には悪影響を与えることになるのです。

心血管疾患のリスクと認知症リスクとの間には関連があり、その点から考えると、高齢者が座っている時間が長いことも、認知症のリスクになると想定されます。

しかし、実際には座位時間と認知症リスクとの関連は、それほど明確に証明されている事項ではありません。

座っている時間で認知症リスクを検証

今回の研究は大規模な健康情報や遺伝情報を収集している、UKバイオバンクの住民データを活用して、ウェアラブル端末の加速度計で正確に測定された、座位時間とその後の認知症リスクとの関連を検証しています。

対象は登録の時点で認知症のない、年齢60歳以上の49841名で、1週間のデータから座位時間の計測を施行し、その後の認知症の発症との関連を検証しています。平均観察期間は6.72年です。

その結果、1日の平均座位活動時間9.27時間に対して、1日10時間の座位時間では、認知症リスクは1.08倍(95%CI:1.04から1.12)、1日12時間では1.63倍(95%CI:1.35から1.97)、1日15時間では3.21倍(95%CI:2.05から5.04)となっていました。つまり、座位時間が平均より長くなるに従って、認知症リスクは明確に増加している、という結果です。

座位時間が長いと健康へのリスクは高い

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今回のデータからは座位時間の長さが、認知症の原因であるとは言い切れず、認知症の症状として意欲低下などがあることを考えると、ごく初期の認知症症状に伴う座時時間の延長が、こうした現象として表れているという可能性もあります。

従って、この問題についてはより詳細な検証が、今後必要と考えられますが、座位時間が年齢と共に長くなることは、色々な意味で健康リスクとなることは間違いがなく、その対策は健康維持の面で、大きな課題であることは間違いがないようです。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36

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