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2019.11.27

脳卒中から間もない時期の運動療法のリスク【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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病気の種類によって、病後すぐにリハビリをしたほうがいいものと、そうでないものがあります。
脳卒中の場合はどうなのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

2019年のBritish Medical Journal誌に掲載された、脳卒中から間もない時期に運動をすることの、病気の予後への効果を検証した論文です。

▼石原先生のブログはこちら

脳卒中後のリハビリとして有酸素運動は有効か?

脳卒中を起こすと、回復しても身体の麻痺などの後遺症が残り、生活の質が大きく低下することが稀ではありません。

同じ動脈硬化に関わる血管の病気である心筋梗塞においては、受傷後の早期から運動を開始し、徐々に身体に負荷を掛けてゆくことが、その後の回復をサポートする上で重要であると考えられています。

その一方で脳卒中においては、通常のリハビリテーションに加えて、受傷後の早期から有酸素運動を行なうことで、より患者さんの予後が改善するかどうかは、明確な結論が出ていません。

脳卒中後5日から45日の患者のリハビリで比較検討

運動した群のほうが再発頻度が高い

そこで今回の検証では、ドイツの複数施設において、中等度以上の重症度の脳卒中を起こしてから、5日から45日の間という亜急性期の患者さん、200名をくじ引きで2つの群に分けると、通常のリハビリテーションに加えて、一方は自立訓練法のようなリラクゼーションのプログラムを行ない、もう一方は積極的な運動療法のトレーニングを、いずれも週に5日25分ずつ行い、3か月後の状態を比較検証しています。

その結果、運動耐容能の指標や患者さんの症状には両群で差がなく、脳卒中の再発や入院などの頻度は、有意ではないものの積極的な運動療法群で高くなっていました。

つまり、積極的な運動は、必ずしも脳卒中の患者さんの予後を改善しなかった、という結果です。

脳卒中発症後の積極的な運動は控えて

この問題は今後より詳細な検証が必要と思いますが、現時点では脳卒中発症から45日以内という時期に、積極的な運動療法は危険な可能性の方が高い、と考えておいた方が良いようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36