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2022.02.19

生活の中でぜんそくと付き合うために必要なこと【気管支喘息#3】

kencom公式ライター:松本まや

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これまでご紹介してきたように、ぜんそくはうまくコントロールし、日常生活を続けていくことのできる病気になりました。治療以外に気を付けることはあるのでしょうか?また家族にぜんそく患者がいる場合、どのようにサポートすればいいのでしょうか。引き続き長瀬洋之教授に詳しく教えていただきました。

ぜんそくとうまく付き合う生活習慣は

発作を出さない状態を保つためには、吸入薬によるコントロールと同時にぜんそくを悪化させない生活を送ることも大切です。

アレルギーが確認される場合、まずはハウスダストの対策を行います。ホコリは低いところに溜まりやすいため、可能であれば床はフローリングとし、ベッドで就寝することを推奨します。掃除の際には、いきなり掃除機をかけてしまうとホコリを舞い上げてしまうことがあります。先に水拭きをしてから掃除機をするなど、ホコリを吸わないようにする心がけが必要です。

ペットの毛、特にネコの毛もぜんそくを悪化させることがあります。必ずしも飼えないわけではないですが、過度に距離を詰めすぎない、寝室には入れないなどの工夫が必要です。

喫煙の習慣がある場合、ぜんそくだけでなく他の呼吸器疾患のリスクも上がりますので、禁煙をおすすめします。

新しい生活様式でぜんそくが減る?

ぜんそく悪化の最大の要因である、ウイルス感染に注意することも重要です。新型コロナウイルス感染症の拡大後、マスクを着用し、他人と距離を取る生活が主流になったことで、全世界的にぜんそくの増悪が減少しました。ウイルス感染の機会が激減したこと、またマスクをしてアレルギーの原因物質を吸い込む機会が減ったためと考えられます。

注意すべき合併症は?

1:アレルギー性鼻炎

ぜんそく患者65%はアレルギー性鼻炎を併発していると言われており、鼻炎の治療を行うとぜんそくの症状も改善する傾向があります。鼻炎の症状が出てしまうと、鼻から出た炎症物質が下気道も刺激し、ぜんそくを悪化させるためと考えられます。春先など花粉症の症状が悪化しやすい時期は特に注意が必要です。

2:副鼻腔炎

蓄膿症とも言われ、鼻の周りの空洞に炎症が起き、膿や粘液が溜まってしまう病気です。ぜんそくを悪化させる要因となりやすく、注意が必要です。

3:逆流性胃腸炎

胃酸や胃の内容物が逆流し、胸やけなどを起こすもので、特に女性が発症しやすい病気です。ぜんそくを悪化させやすいため、胃酸の逆流を防ぐ治療を行います。

これからの課題は高齢ぜんそく

これからのぜんそく治療の大きな課題のひとつが高齢ぜんそくです。ぜんそく死の数が減少している一方で、近年ぜんそくで亡くなる方の多くは65歳以上の高齢者。家族に高齢のぜんそく患者がいる場合、どのようにサポートするとよいのでしょうか。

ぜんそくの治療は適切なタイミングで欠かさずに吸入薬を使用し、発作を起こさないようにコントロールすることが肝要です。高齢患者の治療で課題となりやすいのが、①指示通りの頻度で薬を使用しないケース、②吸入器の使用方法に問題があるケースの2通りです。

最初のケースについて、調子がよくなると、つい薬の使用をやめてしまうことがあります。また高齢の方だと毎日の薬物治療を忘れてしまうこともあります。ですが、無症状であってもよい状態を維持するために欠かさず薬を使用する必要があるので、家族は決まったタイミングで薬を使用しているか、常に気を配っておく必要があります。

また、吸入器を使用する際には決まった手順を守らなければ、薬がきちんと吸い込めないおそれがあります。また高齢になって握力が低下した結果、吸入器のボタンが押せなかったり、吸い込む力が弱くなってしまって薬が喉の奥まで届かなかったりする場合もあります。
使用開始時に薬剤師などに使用方法をたずね、家で使用する際も決まった手順を守っているか、十分に薬が吸い込めているかなど確認するようにしましょう。

ぜんそくとうまく付き合っていくために、本人だけでなく家族も病気や治療内容をよく理解し、サポート体制を築いていくことが重要です。

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長瀬 洋之(ながせ・ひろゆき)先生

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帝京大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー学教授。医学博士。東京大学医学部卒業。東大病院、国立国際医療センター、日本学術振興会特別研究員等を経て現職。日本内科学会総合内科専門医・認定医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医・代議員、日本呼吸器学会専門医・代議員、日本がん治療認定医など。気管支喘息、COPD、肺癌等の呼吸器疾患全般を専門。

著者プロフィール

■松本まや(まつもと・まや)
フリージャーナリスト。2016年から共同通信社で記者として活躍。社会記事を中心に、地方の政治や経済を取材。2018年よりフリーに転身し、医療記事などを執筆中。

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