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2023.04.04

子供の慢性副鼻腔炎に点鼻ステロイド治療は有効か?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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大人、子供問わずによく見られる病気である慢性副鼻腔炎は、ここ十数年あまり治療法に進歩がない病気の一つ。有効な治療法はあるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、JAMA Pediatrics誌に2023年2月27日ウェブ掲載された、小児の慢性副鼻腔炎に対する、点鼻のステロイド治療の有効性についての論文です。

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小児の慢性副鼻腔炎に点鼻ステロイドは有効か

俗に蓄膿症と言われている慢性副鼻腔炎は、鼻づまりや臭いのある膿のような鼻水、頭痛などの症状が慢性に続く、鼻の奥の副鼻腔と呼ばれる場所の炎症で、子供と大人を問わず非常に頻度の高い病気です。

その原因については副鼻腔の構造的な問題や、他のアレルギー疾患との関連、鼻腔の正常細菌叢の乱れなど、様々な研究が報告されていますが、治療については悪化時の抗菌剤治療やステロイドによる炎症の抑制など、この数十年あまり進歩の見られないのが実際です。

そのうち点鼻のステロイド剤の使用は、現行の多くのガイドラインにおいて、大人と子供を問わず、第一選択の治療の1つと位置付けられています。

局所のステロイド剤の使用により、副鼻腔の炎症を抑え症状を緩和する効果が期待されますが、その一方で細胞性免疫は抑制されますから、むしろ正常菌叢を乱し、細菌感染を助長する可能性は否定出来ません。また、成人への使用と比較すると、小児への使用のデータは限られていて、成人と同様に有効であるという根拠は、あまりないのが実際です。

ステロイド点鼻薬の有効性を検証

そこで今回の研究では、小児アレルギー診療専門のクリニックにおいて、慢性副鼻腔炎と診断された4歳から8歳の小児、トータル66名の患者をくじ引きで2つの群に分けると、一方は一般的な点鼻ステロイドである、モメタゾンの点鼻を1日1回12週間使用し、もう一方は未使用(偽薬は使用せず)として、その有効性を比較しています。

その結果、臨床的な指標により鼻閉などの症状の改善が、モタメゾンの点鼻により有意に認められ、更には副鼻腔の粘膜における細菌叢の多様性が、点鼻により正常化していることが確認されました。

細胞性免疫の解析では、自然免疫系のILC3が点鼻により増加していましたが、その意味については現時点では明確ではありません。

鼻腔の細菌叢にもいい影響が

このように、小児の点鼻のステロイドの使用により、慢性副鼻腔炎の症状が改善するのみならず、鼻腔の細菌叢にも良い影響が認められた、という今回の結果は非常に興味深く、今後のより精緻な検証に期待したいと思います。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36