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2024.04.22

マグネシウム不足はメタボのリスクを高める【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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健康に欠かせないミネラルであるマグネシウムは、欠乏すると病気のリスクを上げることがあります。

今回ご紹介するのは、the Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism誌に、2024年2月14日付で掲載された、マグネシウム欠乏とメタボリックシンドロームとの、関連についての論文です。

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マグネシウム不足はメタボのリスクになる?

マグネシウムというのは多くの酵素の働きのために必要なミネラルで、そのためその不足は身体の代謝系に大きな影響を与え、メタボリックシンドロームのリスクになると考えられています。低マグネシウム血症は、糖尿病や脳卒中、心血管疾患などのリスクを上げ、その予後にも悪影響を与えるとの報告もあります。

ただ、マグネシウムは腎臓で80%以上が再吸収されるため、血液のマグネシウムの測定は、必ずしも身体のマグネシウムの動態を、反映していない、という指摘もあります。

マグネシウム欠乏状態とメタボとの関連を検証

そこで今回の研究では、マグネシウム欠乏指数という新たな指標を活用し、アメリカで施行された健康と栄養についての疫学データに含まれる、トータル15565名の一般住民を対象として、マグネシウムの欠乏状態と、メタボのリスクとの関連を比較検証しています。

メタボリックシンドロームは、検査データなどは日本のメタボとほぼ同一ですが、腹囲の基準は男性が102センチ以上、女性が88センチ以上となっています。

マグネシウム欠乏指数というのは、利尿剤の使用の有無、プロトンポンプ阻害剤の使用の有無、推測の腎機能の指標、過度の飲酒の有無をポイント化して、0から6点で指標としたもので、点数が高いほど、マグネシウム欠乏のリスクが高い状態を意味しています。その結果、関連する他のメタボのリスクを補正して算出しても、マグネシウム欠乏指数が1上がる毎に、メタボのリスクは31%(95%CI:1.17から1.45)、有意に増加していました。

マグネシウム不足がメタボのリスクを高めている

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これは敢くまで間接的なリスク指標であることを、理解して考える必要がありますが、年齢や使用している薬によってリスクが増加する、マグネシウムの欠乏が、メタボのリスクに関わっているという指摘は興味深く、今後より多角的な検証に期待したいと思います。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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