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2022.09.02

ミネラルってなんだ?なぜ必要?その特徴や食材を解説【前編】

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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ミネラル、と聞いて何を思い浮かべますか?

食事バランスを語る上で、ビタミンとよく並列で表現されることが多いと思いますが、その定義はどのようなものでしょうか。
今回は『日本人の食事摂取基準2020』に掲載されている、13種類のミネラルについてとり上げたいと思います。

ミネラルって何?

ミネラルとは、人体を構成する主要元素のことです。

体重の約4%を占め、約40種類存在しています。身体を作ったり調子を整えてくれる五大栄養素「炭水化物」「タンパク質」「脂質」「ビタミン」「ミネラル」のひとつで、無機質(むきしつ)と呼ばれることもあります。
なお、炭素(C)水素(H)酸素(O)窒素(N)は、三大栄養素等に多く含まれるため除外されます。

ミネラルは身体の構成、生体機能の調整、酵素の構成成分や働きを助けるなど様々な働きをしています。
例えばカルシウムは骨を作るのに大切なミネラルですが、他にも神経伝達にも重要な働きを持っています。他にも亜鉛は味覚を正常に保つために重要ですし、カリウムは塩分の排泄を促すことで高血圧の予防に効果が期待されています。
量は決して多くありませんが、生きていく上で不可欠な栄養素です。

主な必須ミネラルは13種類

ミネラルの中でも、食事からとる必要があるものを「必須ミネラル」と言います。
ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルト、硫黄、塩素などがあります。

ところで『日本人の食事摂取基準2020』には必須ミネラルは13種類しか掲載されていません。どうして全てが掲載されていないのでしょうか。

例えば「塩素」は胃酸に多く含まれており、体液の浸透圧維持や消化に関わる必須ミネラルです。
過剰に摂取しても汗や尿で排出されるため心配はないとされており、不足すると胃液の酸度が低下して、消化不良や食欲低下を引き起こすとされています。しかし普通の食生活を送っていれば塩素が不足することはないため、摂取基準には掲載されていないのです。

ミネラルは多量と微量の2種類がある

ミネラルの中でも比較的多く必要なものを多量(主要)ミネラル、その他を微量ミネラルとしています。

多量ミネラルはナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リンの5種類。微量ミネラルには鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデンの8種類があります。

今回は多量ミネラルのそれぞれの特徴をご紹介します。

多量ミネラル

ナトリウム

機能

ナトリウムは、カリウムとともに体内の水分バランスを調整したり、細胞外液の浸透圧を維持するという大切な役割をしています。

体内のナトリウムの50%が細胞外液、40%が骨、10%が細胞内に存在しています。筋肉の収縮、神経の情報伝達にも関係しており、胆汁、膵液、腸液等の材料も担っている大切なミネラルです。

摂取量の目安

1日の目標量は(食塩相当量として)15歳以上の男性で7.5g未満、女性で6.5g未満としています。高血圧学会では6g未満、WHOでは5g未満を推奨しています。

大切だと聞くと沢山摂りたくなりますが、ナトリウムを摂りすぎるとリンパ液や血液中の水分量が増え、むくみや血圧の上昇を招きます。特に高血圧の原因になるため摂り過ぎは禁物です。

多く含む食材

ナトリウムは主に食塩、しょうゆ、みそ、ソースなどの調味料、即席めん、ハムなどの加工食品、梅干しなどの漬物などに多く含まれます。

カリウム

機能

カリウムは体液の浸透圧を調整したり、神経や筋肉の情報伝達にも関係している重要なミネラルです。特筆すべきはナトリウムの排出を促す作用です。

摂取量の目安

1日の目安量は18歳以上の男性で2,500mg、女性で2,000mgとなっています。また目標量は18歳以上の男性で3,000mg以上、女性で2,600mg以上です。

日本人の摂取量は不足傾向にあります。積極的にとって欲しい栄養素ですが、腎臓機能に障害がある方は注意が必要です。
健康な人の場合、摂取量を増やすことによって血圧低下、脳卒中予防につながることが様々な実験や疫学調査により分かってきています。

カリウムは汗で出て行ってしまうため、多量の汗をかくと浸透圧の調整がうまくいかず脱水症状を起こすことも。
通常の健康な状態でバランスの良い食事をしていればカリウムは欠乏しません。しかし下痢・嘔吐などで大量に損失すると、浸透圧調整機能が崩れたり、食欲不振などを引き起こすこともあります。

多く含む食材

カリウムを多く含む食材は、野菜全般、きのこ、海藻、芋類、大豆や果物です。

意外と知られていませんが肉類にも多く含まれています。特に脂質が低い肉に多い傾向にあるため、タンパク質が豊富な赤身肉を摂ると良いでしょう。

カルシウム

機能

体内に最も多く存在するミネラルで、体重の1~2%を占めています。
このうち99%は、骨や歯などの硬い組織に存在しています。残り1%のカルシウムは、血液や筋肉、細胞に分布しています。

細胞の情報伝達、筋肉の収縮、神経の働きをサポートするなど大切な役割を担っています。

摂取量の目安

1日の推奨量は30〜74歳の男性で750mg、女性で650mgとなっています。

日本人の摂取量は不足傾向にあります。不足すると骨粗鬆症のリスクが高まり、特に閉経後の女性では吸収率が低くなるため骨粗鬆症になりやすくなります。
成長期から老年期まで重要な栄養素のため積極的に摂りたくなりますが、耐用上限量(健康障害をもたらすリスクがないとみなされる習慣的な摂取量の上限)が設定されています。

過剰摂取は高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織の石灰華、泌尿器系結石、前立腺がん、亜鉛や鉄など、他のミネラルの吸収の抑制作用、便秘なども報告されています。
通常の食事ではまず心配することはありませんが、サプリメントからの多量摂取には気をつけましょう。

多く含む食材

カルシウムを多く含む食材といえば、チーズやヨーグルト、牛乳などの乳製品が浮かびます。
この他しらすや鯖缶、鮭の中骨缶などの骨ごと食べられる魚、ひじきなどの藻類、ごまやアーモンドなどの種実類、小松菜や青梗菜等の緑黄色野菜等があります。

カルシウムはビタミンDとともに摂取することで吸収効率アップされるため、ビタミンDが豊富に含まれる魚介類から摂ると効率的です。
特に鯖缶はDHAやEPA等、ミネラル以外にも摂取してほしい栄養素が豊富に含まれるのでおすすめです。

マグネシウム

機能

骨や歯の形成に深く関与しており、全体の50~60%は骨に存在しています。

またマグネシウムは300以上の酵素の補因子にもなっており、炭水化物、脂質、タンパク質の代謝や体温の調節、神経の伝達、筋肉の収縮にも関与しています。

摂取量の目安

1日の推奨量は30〜64歳の男性で370mg、女性で290mgとなっています。

日本人の摂取量はやや不足気味となっています。不足すると低マグネシウム血症となり、吐き気、嘔吐、眠気、脱力感、食欲不振、筋肉の痙攣、ふるえ等を招くことがあります。
長期の不足では骨粗鬆症、心疾患、糖尿病のような生活習慣病のリスクを上昇させるといわれています。

健康な人の場合、余分なマグネシウムは腎臓で排出されるので通常の食事で過剰摂取の心配はありませんが、サプリメントやにがりなどでマグネシウムを過剰に摂ると下痢を起こす可能性があるので注意しましょう。

多く含む食材

マグネシウムを多く含む食材は、にがり、海苔やわかめなどの藻類、しらす、あさりなどの魚介類、豆腐、油揚げなどの豆類などです。

夏場など汗で失われる事もあるため、積極的に摂りたいときはにがりを味噌汁に数滴入れるなどすると効率よく摂取できます。

リン

機能

骨の形成やエネルギー生成、細胞膜の合成に深く関与しています。全体の85%が骨、14%が軟組織、残りの1%は細胞外液、細胞内構成成分、細胞膜に存在しています。

摂取量の目安

1日の目安量は18歳以上の男性で1000mg、女性で800mgとなっています。

リンはインスタントラーメン等の加工食品に多く含まれ、過剰摂取傾向にあるミネラルです。
腎機能が正常な時は排泄されていきますが、食品添加物として多量に摂取すると副甲状腺機能の亢進を引き起こすことがあるといわれています。

また長期にわたる過剰摂取は腎臓機能やホルモン分泌に影響を及ぼすほか、カルシウムの吸収を妨げることも。そのため耐容上限量があり18歳以上の男女ともに3000mgとなっています。

多く含む食材

インスタントラーメンなどの加工食品、かたくちいわし、干しえびなどの魚介類、卵、ナチュラルチーズやプロセスチーズなどの乳製品に多く含まれています。

参考:e-ヘルスネット 厚生労働省(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/)
参考文献:日本人の食事摂取基準2020 厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf)
参考文献:『基礎栄養学 第二版』(学文社)

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前田 量子(まえだ・りょうこ)

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管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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