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2023.02.10

新型コロナウイルス感染症死亡率を国別に比較すると?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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世界各国で新型コロナウイルスに対する行動制限が緩和されていますが、実際にコロナは軽症化してきているのでしょうか?
今回ご紹介するのは、JAMA誌に2022年11月18日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症の時期毎の死亡率を、国別に比較した短報です。

▼石原先生のブログはこちら

新型コロナは本当に軽症化している?

新型コロナウイルス感染症の流行が続いてはいるものの、以前の行動制限のような厳しい規制は世界的に行われない流れになっています。

その根拠の1つとなっているのが、オミクロン株の流行に伴い感染は軽症化していて、通常の風邪とそれほど違いがない状態となっている、という知見です。

実際にはどうなのでしょうか?

新型コロナウイルス感染症の死亡率を国別に比較検証

今回の検証ではアメリカを主体として、日本を含む20か国の新型コロナウイルス感染症による死亡率と、平均的な死亡率を差し引きした超過総死亡率を、国別に比較検証しています。

各国のデルタ株流行時期とオミクロン株流行時期における、新型コロナウイルス感染症の人口10万人当たりの死亡率を一覧にし比較したところ、新型コロナウイルス感染症による死亡が多いことで知られているアメリカでは、トータルで10万人当たり111.6人の死亡率が算出されていますが、感染対策に成功したとされているニュージーランドでは、3.7人という低率になっています。

日本は10.4人で欧米の多くの国と比較すれば、新型コロナウイルス感染症の生命予後は、非常に良いということが分かります。

ワクチンを2回以上接種している比率との比較では、全て一致している訳ではありませんが、概ねワクチン接種率の高さと、死亡率の低さとが一致している傾向が認められます。

これは単純に死亡数での比較ですが、総死亡のリスクが新型コロナウイルス感染症の流行により、どれだけ上乗せされたかを示す超過死亡率も比較されています。

アメリカは新型コロナウイルス感染症による超過死亡率は、10万人当たり145.5人となっていて、これは新型コロナウイルス感染症単独の死亡率を上回っています。

つまり、アメリカにおいては、新型コロナウイルス感染症の流行が、それを超える大きな影響を、総死亡に与えているという言い方が可能です。

一方でイギリスはデルタ株の流行期には、総死亡にも大きな影響があったのですが、オミクロン株の流行期には一転して、総死亡のリスクはむしろ低下している、という結果になっています。

一方でニュージーランドはデルタ株の時期には、感染の総死亡に与える影響はなかったものの、オミクロン株の時期には増加に転じている、という違いがあります。

過不足のない感染対策を

総じてワクチンの接種や感染対策により、現行の新型コロナウイルス感染症の死亡リスクは、通常の感冒と同等にコントロールすることが可能と考えられますが、一旦その均衡が崩れれば、総死亡のリスクを大きく引き上げるような、深刻な影響を与える可能性もはらんでいるのです。

今後も新たな変異株が出現して、流行を繰り返していくものと想定されますが、その性質を的確に判断しつつ、超過死亡の増加をもたらさないような、過不足のない感染対策を柔軟に講じることが、大切であるのだと思います。

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参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36