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2021.09.30

ファイザーとモデルナ、ワクチンの抗体価を比べると?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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今の日本では、ファイザー社とモデルナ社の2種類の新型コロナワクチンが接種できますが、この二つのワクチンにはどのような差があるのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA誌に2021年8月30日ウェブ掲載されたレターですが、ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社によるmRNAワクチンの、接種後抗体価を直接比較したレターです。

▼石原先生のブログはこちら

ファイザーとモデルナ、どちらの抗体価が高い?

ファイザー・ビオンテック社とモデルナ社による、2種類のmRNAワクチンの高い有効性は、多くの臨床データにより確認されていますが、どちらがより高い抗体価を誘導するのか、というような点については、あまり直接比較的なデータは発表されていませんでした。

今回のデータはドイツにおいて、モデルナワクチンを2回接種後の688名と、ファイザー・ビオンテック社ワクチン2回接種後の959名の血液中のスパイク蛋白に対する抗体価を、GMT(幾何平均抗体価)という指標で比較しているものです。

モデルナワクチンの方が抗体価は高かった

その結果、トータルにおいても、年齢層を分けた解析においても、抗体価はモデルナ社ワクチンが、ファイザー・ビオンテック社ワクチンより有意に高くなっていました。

ワクチン接種前に抗体が陽性であった既感染者では、いずれもワクチンでも未感染より高い抗体価が検出され、未感染と期感染の抗体上昇の差は、2種類のワクチンによる抗体上昇の差よりも、有意に大きなものとなっていました。

モデルナ社ワクチンはファイザー・ビオンテック社ワクチンより現行の通常用量ではmRNA含有量は多く、その接種間隔も4週間と長いことがこの結果に繋がっているのではないか、と上記レターの著者らは推測しています。

副反応が強い可能性も

現行使用されている2種類のmRNAワクチンは、ほぼ同等の性質を有していると考えて良いのですが、モデルナワクチンの方がその免疫刺激においても、副反応の強さにおいても、若干強い可能性が高いと、そうしたデータが最近は多く報告されているようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36