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2020.12.11

新型コロナ、二次感染のリスクが高い行動とは?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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新型コロナウイルスの感染拡大が続き、職場や家庭内での感染も増えてきました。身近に感染者がいた場合、どのような行動をとると二次感染のリスクが高まるのでしょうか。

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、Lancet Infectious Disease誌に2020年11月2日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス感染症の感染が、広がり易いのはどんな状況かを、具体的に検証したシンガポールの報告です。

家庭内感染や職場での感染拡大が急速に進んでいる現在、非常に重要な知見を含んでいると思います。

▼石原先生のブログはこちら

二次感染はどのような時に起こるのか?

シンガポールにおいては、新型コロナウイルス感染症の感染者と接触した人や、その家族は、全てサーベイランスと検査が行われています。今回のデータはその結果をまとめたものです。

2020年の1月23日から4月3日の間に、1114名の新型コロナウイルス感染症と診断された感染者の、濃厚接触者7770名(家庭内1863名、職場内2319名、それ以外の接触者3588名)を、2週間経過観察し、二次感染とそのリスクと思われる行為との関連を検証しています。

この場合家族以外の濃厚接触は、2メートル以内の距離で30分以上接触した場合と定義されています。

濃厚接触者7770名のうち、96.8%に当たる7518名で解析は成功していて、家族内で5.9%、職場内で1.3%、それ以外の接触で1.3%の、二次感染が認められました。これは相当生活に注意していても、このくらいの感染リスクはあるという意味です。

症状が出現した時点で遺伝子検査を行うというやり方では、62%では診断は見落とすと推定され、36%の感染は無症状でした。

二次感染リスクを高める行為とは?

感染リスクを高める行為としては、家庭の同じ寝室で暮らすことは5.38倍(95%CI:1.82から15.84)、感染者と30分以上話すことは7.86倍(95%CI: 3.86から16.02)、それぞれその行為をしない場合と比較して、家族内感染のリスクを有意に高めていました。

家族以外の感染では、2人以上の感染者との接触で3.92倍(95%CI2.07から7.40)、感染者との30分以上の会話で2.67倍(95%CI:1.21から5.88)、感染者との車の同乗で3.07倍(95%CI:1.55から6.08)、それぞれ有意に二次感染のリスクを高めていました、

一方で同じ物体への直後の接触や、食べ物の同皿からのシェア含む一緒の食事、トイレの共同使用については、有意な感染リスクの増加は認められませんでした。

物体接触でのリスクは「低」、30分以上の会話は「要注意」

要するに、30分を超える会話は、たとえマスクをしていてもしない方が良く、タクシーに乗り合わせるようなことはするべきではなく、家族は同じ部屋で寝るのは不可ですが、気をつけていれば食事や洗面、トイレのリスクはそこまでではなく、接触感染にはそこまで神経質になることはなさそうだ、という辺りが現時点での結論に、上記データからはなるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36