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2022.11.04

メタボってなんだ?食事・栄養観点から考えるメタボの話【前編】

kencom公式:管理栄養士・前田 量子

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「メタボ」という言葉を聞いたことがありますか?
聞いたことがある、実際に健康診断や保健指導でも注意を促されたことがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

メタボリックシンドロームとは

出典:メタボリックシンドロームの診断基準 山岸 良匡(厚生労働省e-ヘルスネット)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html

出典:メタボリックシンドロームの診断基準 山岸 良匡(厚生労働省e-ヘルスネット)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html

メタボとは「メタボリックシンドローム」の略称で、内臓肥満(内臓脂肪型肥満)に高血圧、高血糖、脂質代謝異常が組み合わさった状態を言います。

内臓肥満はウエスト周囲径(おへその高さの腹囲)で測りますが、男性は85cm・女性は90cm以上が基準となります。
加えて血圧・血糖・脂質の3つのうち2つ以上が基準値から外れると、「メタボリックシンドローム」となります。

心臓病や動脈硬化のリスクファクターに

日本人の死因の第二位に心臓病、第四位に脳血管疾患があります。(※)

この病気のリスクファクター(危険因子)はどちらも動脈硬化が挙げられています。そして動脈硬化のリスクファクターとして高血圧、喫煙、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、肥満があります。
これらはそれぞれひとつでもリスクファクターとなり動脈硬化を進行させます。一方でひとつの要因だと軽微なものも、組み合わさることで動脈硬化の進行は早まる可能性があるとされていて、結果的に心臓病や脳血管疾患の危険が高まることが報告されています。

これらが組み合わさる症状のことを以前から様々な呼び名でいわれていましたが、1999年にWHO(世界保健機関)がメタボリックシンドロームの概念と診断基準を提唱しました。
しかしその後、様々な機関で診断基準が提唱されたため、メタボリックシンドロームの考え方は国によっても異なる事があります。

※出典:令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況(厚生労働省) https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf

日本の「メタボ」基準

日本では、2005年に日本内科学会などの8つの医学系の学会が合同し、内臓脂肪を基盤とした考え方を採用してメタボリックシンドロームの診断基準を策定しました。

その考え方としては
・肥満にも種類があるが、肥満のなかでもおなかの内臓に脂肪がたまり腹囲が大きくなる「内臓脂肪型肥満(内臓肥満)」が高血圧や糖尿病、脂質異常症などをひきおこしやすくする
・この内臓肥満にプラスして高血圧や糖尿病、脂質異常症が重複し、その数が多くなるほど、動脈硬化を進行させる危険が高まる
というものです。

特定健康審査・特定保健指導で取り扱われて行く中で、「メタボ」という覚えやすいフレーズで多くの人にその存在が知られるようになりましたが、“ただの肥満”“ウエストが太い人のこと”と間違われている事もあるので、正しく理解することが大切です。

メタボになりがちなNG生活と改善ポイント

メタボリックシンドロームと内臓脂肪には深い関係があることが分かりました。そこであらためて、内臓脂肪とは何なのかを考えてみましょう。

身体にたまる脂肪には、大きく分けて「皮下脂肪」と「内臓脂肪」の2種類があります。

皮下脂肪は皮膚の下にくっつく脂肪のことで、腰から太ももにかけて蓄積しやすく、体温の維持に役立っています。
内臓脂肪は皮下脂肪より内側、内臓の周辺や腸などの消化管を固定する膜などに蓄積します。
どちらも摂取したカロリーが運動不足等で十分に利用されず、蓄積されることで増えていきます。

血糖値を急上昇させる食生活に注意

炭水化物も脂質もタンパク質も、カロリーを発生するものは全てその要因になりますが、特に内臓脂肪になりやすいのは糖質といわれています。

体内に脂肪が蓄積されるメカニズムにインスリンがあります。
インスリンは血糖値を安定させる大切なホルモンで、人が飢餓状態に備えてエネルギーを身体に溜めるという目的においてとても大切な働きをしています。

しかし飽食の時代では糖質が過剰摂取傾向になり、インスリンの分泌が過剰になることが多くなりました。
インスリンは分泌され過ぎると糖質の脂肪化が進む肥満ホルモンにもなりますので、血糖値が急激にあがる食生活はNGです。血糖値の急激な上昇は糖質過剰摂取と早食いが大きな要因。
甘いものの食べすぎ、主食ばかり食べる、主食の量が多い、よく噛まずにはやく食べる、などが挙げられます。

メタボを改善するポイント

メタボリックシンドロームを解消するには

1.適度な運動
2.バランスの良い食事

が大切です。

では「適度な運動」とはどれくらいをさすのでしょうか。

運動は週に「10メッツ・時」を目標に

ひとつの運動で内臓脂肪を減少させるためには、少なくとも「週当たり10メッツ・時以上」の有酸素性運動を加える必要であることが知られています。

メッツとは身体活動の強さと量を表す単位で、身体活動の強さについては「メッツ」を用い、身体活動の量については「メッツ・時」(「エクササイズ」とも呼ばれる)を用います。

出典:健康づくりのための運動指針 2006~生活習慣病予防のために~ (厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/dl/s0719-3c.pdf

出典:健康づくりのための運動指針 2006~生活習慣病予防のために~ (厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/dl/s0719-3c.pdf

「健康づくりのための運動指針2006」によると、やや速歩(ウォーキング)を16分すると1メッツ・時(1エクササイズ)となります。
つまりやや早歩きのウォーキングを週に160分(16×10メッツ・時)行えばよいということになります。

より高い強度の方が効果が高そうに見えますが、減量を目的とした場合には強度に関わらず、どのくらいエネルギーを消費したかが重要となります。
高強度だと時間は短くなりますが、その分ひざや腰、関節に負担をかけることもありますので、ご自身の体力に合わせて無理なく選ぶことをおすすめします。

運動時間は「総時間」でOK

1回にどのくらいの運動時間が理想的かということも気になります。
以前は20分以上運動しないと脂肪が燃焼しないといわれていました。しかしこれまでの研究成果から、1日に30分の運動を1回おこなっても、10分の運動を3回おこなっても、両者の減量効果に差のないことが認められています。

つまり同じ運動であれば、その効果は総運動時間に対応するといえます。
前述したようにやや早歩きのウォーキングを選択したとして、週に160分の運動を一気に運動しなくてはいけないわけではないので、「平日5日間は10分、週末は10分+1時間ずつおこなう」というように無理なくとり入れるようにしましょう。

運動と食事の改善で脱メタボ

軽い運動はエネルギー消費はもちろんのこと、ストレス解消になりますし、食べすぎ防止としてもおすすめです。

後編はメタボと食事についてご紹介します。

参考文献:
メタボリックシンドローム(メタボ)とは?(厚生労働省e-ヘルスネット)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-001.html
メタボリックシンドロームの診断基準(厚生労働省e-ヘルスネット)https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-01-003.html
令和3年(2021)人口動態統計月報年計(概数)の概況 (厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai21/dl/gaikyouR3.pdf
健康づくりのための運動指針 2006~生活習慣病予防のために~ (厚生労働省)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/07/dl/s0719-3c.pdf

前田量子

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管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

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