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2024.04.12

胃癌に加えて大腸癌リスクも上昇!ピロリ菌感染には要注意【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると胃癌のリスクが上がることは広く知られていますが、それだけでなく大腸癌の発症にも影響する可能性があるのだそう。

今回ご紹介するのは、Journal of Clinical Oncology誌に、2024年3月1日付で掲載された、ピロリ菌の感染が大腸癌の発症に及ぼす影響についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

ヘリコバクター・ピロリ菌感染は大腸癌リスクを上げる?

胃粘膜で生育するヘリコバクター・ピロリ菌が、萎縮性胃炎や胃癌のリスクとなり、除菌治療がその予防に繋がることは、専門家のみならず今では一般にも広く知られている事実です。

ピロリ菌の感染は胃癌以外にも、大腸癌の発症リスクを上昇させることを示唆するデータが、幾つか報告されています。例えば2020年に発表されたメタ解析の論文では、ピロリ菌の感染により大腸癌のリスクは1.7倍に上昇したと報告されています。(※2)ただ、実際には単独の疫学データで、それほど大規模なものはなく、報告によっても結果にはかなりの幅があります。

ピロリ菌の感染者の大腸癌リスクを調査

今回の研究はアメリカの退役軍人を対象とした、大規模な疫学データを解析したものです。ピロリ菌の検査を施行した退役軍人、トータル812736名のうち、25.2%に当たる205178名が陽性と診断されました。15年の観察期間において、ピロリ菌の感染者は非感染者と比較して、大腸癌に罹患するリスクが18%(95%CI:1.12から1.24)、大腸癌により死亡するリスクが12%(95%CI:1.03から1.21)、それぞれ有意に増加していました。

また、ピロリ菌の感染があって未治療であると、除菌治療を施行した場合と比較して、大腸癌に罹患するリスクが23%(95%CI:1.13から1.34)、大腸癌により死亡するリスクが40%(95%CI:1.24から1.58)、それぞれ有意に増加していました。

やはり、今回の大規模な検証においても、ピロリ菌の感染が持続していると、大腸癌のリスクも増加することは間違いのない事実であるようです。

ピロリ菌除菌は大腸癌予防にも効果あり

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それでは、何故ピロリ菌の感染が大腸癌と関連しているのでしょうか?現時点では不明ですが、ピロリ菌自体が大腸粘膜においても、発癌を誘発する可能性を示唆する、実験的なデータが存在しているようです。

そのメカニズムは今後の検証を待つ必要がありますが、ピロリ菌の除菌は胃癌予防のみならず、大腸癌予防に対しても一定の有効性が期待出来るので、その施行はより積極的に行う必要がありそうです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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