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2022.11.10

大腸がん検査は内視鏡だけでも有効か?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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大腸がんの検査としては、便潜血検査と内視鏡検査の2種類があります。両方を組み合わせて行うと有効と言われていますが、内視鏡検査だけ行った場合も、ある程度の効果があるのでしょうか?

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2022年10月9日掲載された、大腸ファイバーによる大腸がん検診の有効性についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

大腸がん検査は内視鏡だけでも有効か?

大腸がんはスクリーニングの有効性が確認されている、数少ないがんの1つです。

便の潜血反応の検査と、大腸内視鏡検査(S状結腸までの検査を含む)の、それぞれを単独で施行するか、組み合わせて施行することで、一定の有効性があることが、これまでの多くの臨床試験において確認されています。

ただ、たとえば単独の大腸内視鏡検査による検診に、どの程度の有効性があるかについての、精度の高いデータはあまり存在していません。

内視鏡検査だけでも大腸がんリスクは低下

今回の検証はポーランド、ノルウェー、スウェーデンにおいて、55から64歳の一般住民84585名を登録し、くじ引きで1対2に分けると、28220名は1回の大腸内視鏡検査施行を推奨し、56365名はそうした推奨はせず、その後10年のリスクを比較検証しています。

実際には推奨された対象者のうち、内視鏡検査は42%に当たる11843名で施行されています。

中央値で10年の観察期間においての大腸がんリスクは、コントロールと比較して大腸内視鏡検査推奨群では、18%(95%CI:0.70から0.93)有意に低下していました。一方で大腸がんによる死亡リスクや総死亡のリスクについては、両群で有意な差は認められませんでした。

実証に結びつくことを期待

このように今回の大規模な検証において、大腸内視鏡検査を1回のみ推奨するスクリーニングは、10年の大腸がんリスクを一定レベル低下させる効果が確認されました。

こうしたデータの蓄積により、今後どのような大腸がんスクリーニングが抑制と予後改善に結び付くのか、そして実証的なガイドラインへの反映を期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36