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2024.02.19

長引く腰痛かどうかを見極める基準はある?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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デスクワークをしているビジネスパーソンは、腰痛に悩まされている方も多いはず。どのような腰痛は長引き、どのような腰痛はすぐ治るという法則性はあるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、Canadian Medical Association Journal誌に、2024年1月21日付で掲載された、腰痛の自然経過についての論文です。(※1)

▼石原先生のブログはこちら

腰痛のメカニズムとは?

所謂「ぎっくり腰」と呼ばれるような腰の痛みは、誰でも経験すると言っても良いくらい、非常に一般的な症状です。

しかし、これほど身近で一般的な症状でありながら、その原因やメカニズムなどは、科学がこれだけ進歩していても、あまり明らかにはなっていません。

腰の痛みの中には、骨折や骨や造血系の悪性腫瘍など、すぐに治療を要するものもありますが、大多数の腰痛の原因は検査をしても不明で、痛み止めや湿布、理学療法、温熱療法などで経過をみる以外に、有効な治療も確立していません。

急性の腰痛の多くは概ね6週間くらいの経過で自然に改善することが多く、そのため予後の良好な症状と考えられています。

ただ、その一方で一度腰痛を経験すると、そのうちの69%は1年以内に再発を起こす、というような報告もあり(※2)、その中には痛みが長期間持続する、慢性疼痛と呼ばれる状態に移行することもあります。

問題は同じように見える腰痛のうち、どのようなケースが慢性化し易いのか、という点にあります。つまり、雑多に見える腰痛症の自然経過を観察する必要があるのです。

どのような腰痛が慢性化しやすいのかを調査

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今回の研究は、これまでの主だった臨床データをまとめて解析するメタ解析という手法で、腰痛症の自然経過を解析しているものです。

この研究では、原因不明の腰痛症を、6週間未満で症状が改善する急性腰痛と、6から12週間未満までで改善する亜急性腰痛、12週以上持続する慢性腰痛に分けて、その経過を検証しています。

これまでの95の臨床研究をまとめて解析したところ、急性腰痛と亜急性腰痛の患者のうち、大多数は発症6週間の時点で、痛みの状態が大きく改善していましたが、慢性腰痛の患者では、発症6週の時点でそれほどの改善が認められていませんでした。

つまり、その腰痛が長引く性質のものであるかどうかは、最初は見極めが付かないものの、発症6週の時点での症状を見ることにより、かなり推測することが可能だ、という結果です。

慢性腰痛かどうかは、発症6週目で推測できる

こうしたデータは、一見大したことがないもののように思われますが、臨床的には結構重要なもので、腰痛の患者さんを診察する上では、非常に意義のある知見であるように思います。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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