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2022.12.22

マスクを義務化すれば感染予防できるか?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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日本ではまだマスク着用が一般的ですが、欧米ではマスクを外している方も増えているようです。マスクにはどの程度感染予防効果があるのでしょうか。

今回ご紹介するのは、the New England Journal of Medicine誌に、2022年11月9日ウェブ掲載された、学校でマスクを義務化することの感染予防効果を検証した、アメリカでの公立学校のデータです。

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マスクの有効性はどの程度?

屋内でマスクを着用することが、新型コロナウイルスの感染予防のために有効であることは、ほぼ実証された事実ですが、その有効性がどの程度であるかについては、議論のあるところです。

特に欧米ではマスク着用に抵抗感が大きいので、その使用は日本より早期に、解除に向かっていることは皆さんもご存じの通りです。

アメリカ、マサチューセッツ州では、新型コロナの感染拡大後、2022年1月までは屋内でのマスク着用が、公立学校の生徒と職員に義務化されていましたが、2022年2月に解除されました。
ただ、ボストン周辺の一部の学校では、2022年6月までマスクの義務化が継続されていました。

マスクの感染予防効果を比較検証

その事実を利用して今回の研究では、マスクの義務化が撤廃された以降の感染状況を、その後5か月マスクの義務化が維持されていた学校と比較して、マスクの感染予防効果を比較検証しています。

対象はマサチューセッツ州の72の学区における、294084名の公立学校の学生と46530名の職員です。

その結果、マスク着用の義務化を中止して15週間において、マスク義務化中止に起因すると想定される感染者は、学生及びスタッフ1000人当たり、44.9件(95%CI:32.6から57.1)に上っていました。

この患者数の増加はマスク義務化中止後、12週から15週において顕著に認められました。これは推計で11901件の増加に匹敵し、その地域全体の学校関連の感染者の29.4%に達していました。

このように公立学校においてマスク着用を義務化することにより、学校における感染者はかなりのレベルまで抑制され、それが周辺の地域全体の、感染者の抑制にも繋がっていることが、今回のデータからは明確に示されました。

感染抑止効果があるのは間違いない

全ての集団でこうしたことが成り立つ訳ではありませんが、地域住民が集団生活するような状況においては、マスク着用を義務化することで、感染を抑止する効果のあることは、間違いがないと言って良いようです。

記事情報

参考文献

著者/監修医プロフィール

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36