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2020.10.14

子供は新型コロナウイルスに罹りにくい…は本当か?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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日々感染者が増える新型コロナウイルス感染症ですが、子供の感染は少ないのだそう。年齢と感染のしやすさに関係はあるのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにkencom監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、kencom読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、JAMA Pediatrics誌に2020年9月25日ウェブ掲載された、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染しやすさと、年齢との関連を検証したメタ解析の論文です。この問題は以前から何度も議論されながら、未だ解決が見られていないものです。

▼石原先生のブログはこちら

子供はコロナに罹りにくいのか

新型コロナウイルス感染症は小児の感染事例が少なく、あっても殆どが軽症であるというのは、この病気の感染拡大の初期から広く知られている知見です。

ただ、その後家族内感染の事例などでは、軽症ではあっても子供の感染は意外に多く、遺伝子検査からの推定では、”小児のウイルス量は大人よりむしろ多い”という報告などもあります。

小児の感染事例で軽症の多いこと自体は事実としても、小児がこの病気に罹りにくいのかどうか…という点と、周辺に感染する力が大人と比べて弱いのかどうか、という点については、明確な結論が得られていません。

20歳未満と20歳以上に分けて感染リスクを調査

今回の研究は、これまでの臨床データをまとめて解析した、システマティックレビューとメタ解析です。

これまでの32の臨床研究の、20歳未満の41640名と、20歳以上の268945名の感染者を比較検証したところ、20歳以上と比較して20歳未満の感染リスクは、44%(95%CI:0.37から0.85)有意に低下していました。

これを10から14歳未満の小児期と、10から12歳以上の思春期に分けて解析すると、小児の感染リスクは大人と比較して、その感染リスクは48%(95%CI: 0.33から0.82)、より低い一方で、思春期のみの解析では有意な低下は認められませんでした。

そして、小児の感染者から大人への感染力がどの程度であるのか、という点についてはデータのばらつきが大きく、現時点では明確な傾向が認められませんでした。

10~14歳の子供は罹りにくいが、周囲への感染リスクはまだ不明

このように、現状10から14歳未満の小児は、新型コロナウイルス感染症に大人より罹り難いことは間違いがなさそうですが、決して罹らないということではありません。そして、小児の感染者から周辺への感染リスクについては、現状は明確なことが言えるようなデータの蓄積はないようです。

この問題はまだまだ検証が必要であるようです。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36