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2020.12.16

慌ただしい時こそ注意!魔女の一撃は突然に【ギックリ腰・前編】

kencom公式ライター:黒田創

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欧米では昔から「魔女の一撃」と恐れられるほど、時と場所を選ばず襲って来るギックリ腰。腰に強烈な痛みが走るため、経験者の中には「あんな痛みは生まれて初めて」と言う人も多いのだそう。
程度によってはその場から身動きができなかったり、しばらくの間思うように身体を動かせないなど、ギックリ腰に罹ると何かとやっかいです。そんなギックリ腰は、なぜ起こるのでしょうか。

整形外科医として長年の治療経験を持ち、運動療法にも力を入れている東京・中央区のリバーシティすずき整形外科院長、鈴木秀彦先生に伺いました。

鈴木 秀彦(すずき・ひでひこ)先生

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1993年東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業。東京慈恵会医科大学、国立療養所東宇都宮病院勤務などを経て米国留学。その後東京都職員共済組合青山病院、国立病院機構西埼玉中央病院で整形外科医長、東京慈恵会医科大学整形外科学講座医局長を務める。2015年リバーシティすずき整形外科を開院。22年間の大学での臨床経験を足掛かりに、よき「街のかかりつけ医」を目指す。

何気ない動作から激痛が襲う!ギックリ腰とはなんなのか

ギックリ腰の正式名称は『急性腰痛症』

ギックリ腰は医学的には「急性腰痛症」と呼ばれます。腰の筋肉や椎間板、椎間関節、靱帯などさまざまな部位の不調から生じ、かがんだ時にきたしやすいため「腰椎捻挫」とも言われます。

床に落ちた紙くずを拾おうとした時、引っ越しでヨイショと重い段ボールを持ち上げようとした時、また立ったまま靴下を履こうとした時など、日常のちょっとした動作で発症することが多いのが特徴。中には大きなクシャミをした瞬間に腰に激痛が走るケースも。

身に覚えがある方もいらっしゃると思います。

筋肉疲労や運動不足が大きな要因に

急性腰痛症の原因はたくさんあって、様々な要因が重なり合うことでも起こり得る。これが専門家の見解です。

その大きな原因のひとつが筋肉の疲労です。ギックリ腰は突発的に起こりますが、そこに至る過程は日常生活の中で密かに進行しています。
連日の長時間のデスクワークで、肉体労働で、はたまた激しい運動によって。そうして徐々に溜まっていった腰周りの筋疲労が、先に挙げたようなきっかけでキャパシティをオーバーしてしまい、強烈な痛みとなって表出すると考えられます。

上半身と下半身の狭間にある腰という部位は筋疲労が溜まりやすく、睡眠不足やストレスなども悪影響を与えます。
私たちは、知らず知らずのうちに腰に大きな負荷をかけていると考えた方がいいでしょう。

また、運動不足もギックリ腰の原因となりえます。普段腰周りの筋肉を刺激していないと、筋力が弱ったり凝り固まるなどして、急に負担をかける行動をした場合にグキっとなるのです。特に昨今はコロナ禍によるテレワークの影響で運動不足状態に陥っている方が多いと思われます。

テレワーク続きによる座りっぱなしや運動不足は、脊椎など骨格にも悪影響を及ぼします。一日中同じ座り姿勢でいるのを長期的に続けていると、背骨の下部を中心に骨格の歪みが生じ、周辺の特定の筋肉にも大きな負荷がかかる可能性が高くなる。それがギックリ腰を招く可能性があります。

また、運動不足によって腹筋や背筋の筋力が衰えることで、それらの筋肉が支えるべき脊椎に過負荷がかかり、結果的に腰周りの筋肉に筋疲労が蓄積しギックリ腰になることもあります。
コロナ禍で明らかに椅子に座る時間が増えた、とか、運動不足になったという方はギックリ腰予備軍と言えます。思い当たる節がある方は十分注意しましょう。

中には、ギックリ腰をきっかけに詳しく調べてみたところ、椎間板ヘルニアや圧迫骨折、また内臓系の重大疾患が見つかったケースも少なくありません。繰り返しになりますが、ギックリ腰には本当にさまざまな要因が考えられるのです。

腰に違和感を覚えたら要注意

主な症状としては、その呼び名の通り腰周辺の痛みが中心となります。
「ジンジンした痛み」や「ピリッと電流が流れるような痛み」、また「筋肉がピーンと突っ張る痛み」などが代表的です。

程度には個人差がありますが、多くの方が日常生活に支障をきたすようになります。
上記のような症状が出て、一晩寝ても痛みが治まらない場合は、早急に整形外科を受診しましょう。

早い段階で治療すれば数日から1〜2週間で症状は徐々に緩和することが多いです。
まったく改善しなかったり、さらに痛みが激しくなる場合は、先に挙げたように別の疾患の可能性も考えられます。
いずれにせよ、早く診察を受けるに越したことはありません。

本人になんの覚悟もないまま訪れることの多いギックリ腰。もちろん一番はならないに越したことはありませんが、もしなったとしてもしっかりしたケアを行うことで治療は可能です。
次回は、ギックリ腰の治療法と予防策についてお話しします。

■魔女の一撃を回避・治すには?ギックリ腰治療最前線はこちら

著者プロフィール

■黒田創(くろだ・そう)
フリーライター。2005年から雑誌『ターザン』に執筆中。ほか野球系メディアや健康系ムックの執筆などにも携わる。フルマラソン完走5回。ベストタイムは4時間20分。

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