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2024.02.12

骨を強化するビタミンDは呼吸器の感染症予防ができる?【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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ビタミンDは骨の維持に欠かせない栄養素ですが、それ以外にもたくさんの健康にいい効果があるのだそう。

今回ご紹介するのは、Clinical Infectious Diseases誌に、2023年12月19日付で掲載された、ビタミンDの上気道感染予防効果についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

ビタミンDは呼吸器の感染症を防ぐ?

ビタミンDは健康な骨の維持のために必須のビタミンですが、それ以外にも抗炎症作用や免疫の調整作用など、多くの健康に良い働きを持つことで知られています。血液のビタミンD濃度の低下と、動脈硬化関連の病気や癌のリスク増加との間に関連のあることが、これまでに報告されています。

ただ、その一方でビタミンDをサプリメントとして使用しても、そうした病気の予防には多くの場合繋がっていません。

ビタミンD濃度の低下はまた、呼吸器の感染症のリスクとも関連が指摘されています。こちらについては、ビタミンDの補充により、急性呼吸器感染症や喘息、COPDの急性増悪が、一定レベル予防されたとするデータが報告されていますが、その一方で有効ではなかったとする報告も見られていて、この問題は現時点で解決されているとは言えません。

急性上気道感染に対するビタミンDの有効性を検証

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今回の研究はアメリカにおいて、ビタミンDとオメガ3系脂肪酸の、心血管疾患と癌に対する予防効果を検証した、臨床試験のデータを活用することで、ビタミンDのサプリメントの、急性上気道感染に対する有効性を検証しているものです。

対象は動脈硬化性の病気は癌の既往のない、登録時で50歳以上の男性と55歳以上の女性、トータル15804人で、くじ引きで2つの群に分けると、一方はビタミンDを毎日2000IUサプリメントで使用し、もう一方は偽のサプリを使用して、1年間の経過観察を施行しています。

登録時点での血液のビタミンD(25OHD)濃度は、平均で31ng/mLで、そのうちの2.4%は欠乏の指標とされる、12ng/mL未満となっていました。

検証の結果、観察期間中の上気道感染のリスクは、ビタミンD使用群と未使用群との間で有意な低下は示されず、ビタミンDの欠乏群のみの解析でも、リスク低下の傾向はあったものの、矢張り有意なものではありませんでした。

今のところその効果は明確ではない

このように、対象を絞り込めば、一定の予防効果がある可能性は否定できないのですが、トータルには中高年でビタミンDの補充を行っても、それが風邪などの予防に繋がる根拠は、現状は明確なものはないと考えるのが妥当であるようです。

記事情報

引用・参考文献

著者/監修医プロフィール

石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。

略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医

発表論文
・Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
・Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
・Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36
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