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2023.11.02

食物繊維でおなかすっきり。秋の主役食材きのこを徹底分析【旬野菜図鑑】

kencom公式:管理栄養士・前田量子

©️yumi koizumi

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野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が多くの研究から導き出されています。しかし、日本人の野菜類平均摂取量は、目標の350gに届かず「健康にいいことはわかっているが、十分な量の野菜を摂取できていない」のが現状です。

本連載『旬野菜図鑑』では毎月旬の野菜をピックアップ。栄養や選び方を、管理栄養士の前田量子さんに教えていただきます。

11月の旬野菜は“きのこ”です。関連記事では、白菜をたっぷり美味しくいただくレシピもご紹介しています。併せてご覧ください。

食卓の常連きのこが主役を張るのは秋

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農業技術の発達で人工栽培が増え、様々な種類のきのこが1年を通して入手しやすくなりました。夏でも冬でも、一品足りない時にきのこ料理をプラスする人も多いでしょう。しかし、きのこの旬といえばやはり秋。天然ものが育ち食べごろを迎えます。

【栄養】食物繊維の含有量がいちばん多いきのこは?

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂) イラスト:Adobe Stock

出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂) イラスト:Adobe Stock

きのこ類に多く含まれる食物繊維。きのこの中でも特に食物繊維が多いのはしいたけ。しいたけ100g中にはなんと4.9gもの食物繊維が含まれています。ほかにも、よく食卓に並ぶきのこの中では、えのきたけ3.9g、まいたけ3.5g、エリンギ3.4g、ぶなしめじ3.0gと高い数値が続きます。

代表的な栄養素のほかに、きのこに含まれる成分としてβグルカンがあります。免疫細胞を活性化させるといわれています。

食物繊維

きのこ類の食物繊維は摂取すると腹持ちが良くなり、食べすぎ防止、空腹を感じにくくなる効果が期待できるため、積極的に摂りたい栄養素のひとつです。血糖値上昇の抑制や、血液中のコレステロール濃度の低下や整腸作用に効果があるなど、現代人の多くの悩みを解決してくれる頼もしい存在といえるでしょう。

厚生労働省が出している日本人の食事摂取基準(2020年版)では、1日あたりの食物繊維の目標量は、18~64歳の男性で21g以上、女性で18g以上とされています。しかし、現代人の食生活では食物繊維が不足しがちです。

きのこにはさまざまな種類がありますが、平均して100g中3g以上と、食物繊維を豊富に含むさつまいもと同じくらいの食物繊維が含まれています。しかもエネルギーは、さつまいもよりも5分の1と非常に低カロリーという優れもの。

食物繊維の不足を感じている人は、ぜひきのこを積極的に食べるよう心がけてください。

ビタミンB1

きのこには、糖質をエネルギーに変える時に使われるビタミンB1も含まれています。

糖質を食事から摂取してエネルギーに変える際には酵素が必要です。酵素を働かせるときに必要な補酵素がビタミンB1です。お米を主要なエネルギー源にしている日本人には、大切なビタミンといえるでしょう。

ビタミンB1は水溶性なので尿で排泄されやすく、定期的な摂取が必要です。きのこには平均して100g中に約0.15mgのビタミンB1が含まれています。これは成人が1日に必要な量の10%相当になります。ヒラタケは特に多く含んでおり、100g中0.4mgとまいたけの4倍にもなります。

ビタミンB2

ビタミンB2は三大栄養素(炭水化物・脂質・たんぱく質)をエネルギーに変えるときに必要な栄養素です。特に脂質の代謝に多く使われます。

また発育のビタミンともいわれており、たんぱく質の合成を助けて皮膚や髪、爪などの細胞の再生・新生を助けている一方、実は老化や生活習慣病予防にも一役買っています。なぜなら老化の原因のひとつである過酸化脂質を消去する働きをしているからです。また、ビタミンB2の不足は、肌荒れや髪、口角炎や口内炎など多くのトラブルに繋がります。
ビタミンB2は水溶性ビタミンですが熱に強く比較的排出されにくい特徴を持っています。ただし光には弱いので、明るい場所での保管は避けましょう。

きのこ全体では平均して100g中に約0.15mgのビタミンB2が含まれています。これは成人が1日に必要とするビタミンB2の1割相当。ビタミンB1同様、特にヒラタケに多く含まれており、100g中0.4mg。これはしめじやエリンギなどの2倍という驚きの多さです。

葉酸

葉酸はほうれん草の抽出物から発見されたビタミンB群の一種です。新しい細胞が合成されるには細胞の情報を正確にコピーしていく必要がありますが、そこでかかわってくるのが葉酸です。

人間の体内では常に新しい赤血球が作られていますが、葉酸はビタミンB12とともに赤血球の素となる赤芽球を作り、造血のビタミンとも呼ばれています。

葉酸はビタミンCとともに食べると造血作用がより強化されます。ビタミンB1、B2同様特にヒラタケに多く含まれており、100g中92μgと成人が1日に必要な量の40%を摂ることができ、やはりしめじやエリンギなどの2倍にもなります。

葉酸は水溶性で光、加熱、酸化にも弱いため冷蔵庫で保管し、なるべく早く食べるようにしましょう。ゆでるとアスパラガスは9割、菜の花やブロッコリーは6割が水に流れ出てしまうと言われています。電子レンジで加熱したり、汁ごと食べるような調理法が良いでしょう。

ナイアシン

ナイアシンはビタミンB群の一種。体内でアミノ酸の一種であるトリプトファンからも合成されるビタミンです。糖質や脂質がエネルギーに変わる時の補酵素です。また、ホルモンの合成やDNA修復細胞分裂など幅広く関与しています。光や熱、酸、アルカリにも比較的強く、体内での利用率も低くありません。

ナイアシンは他のビタミンB群と一緒に摂ることで作用が強まります。ビタミンB1、B2、葉酸同様特にヒラタケに多く含まれており100g中11mgと成人の80%摂ることができ、しいたけの約3倍にもなります。

ビタミンD

ビタミンDはカルシウムの吸収や代謝を助けてくれます。骨や歯の形成、成長促進に不可欠な要素で、体内に入った後、肝臓と腎臓で活性型ビタミンDになります。活性型ビタミンDは小腸でカルシウムとリンの吸収に必要なたんぱく質の調節を助けてくれ、腸管からのカルシウムの吸収を高めてくれます。

また、血液中のカルシウムを骨に運び沈着させる手助けもしています。筋力を強くするという働きもあります。紫外線により皮膚でもつくられる性質も。脂溶性のため脂質を含んでいるものと一緒に摂ると吸収率が上がります。

きのこ類は紫外線にあたるとビタミンDにかわるエルゴステロールという成分を含んでいるため、日光に当てて成分を増やすのもおすすめです。

ビタミンDはマイタケに非常に多く含まれており、100g中4.9μgと成人の50%を摂ることができます。しいたけやヒラタケの16倍にもなります。

【選び方】美味しいきのこはここで見分ける

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スーパーでよく見かけるきのこ類ですが、どのようなものが食べごろで味がよいのでしょうか。きのこ類共通の注意ポイントは、袋に水滴がついているものを選ばないこと。水滴がついたものは鮮度が悪かったり、保存状態が悪い可能性が高く、痛みやすいので避けましょう。

きのこの種類別に選び方をご紹介します。

ぶなしめじ

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・カサにハリと丸みがあり、軸が適度に太くしまっている
・色は好みで良い。カサの色の濃淡の違いは、品質や味の違いとは関係はないといわれている

えのきたけ

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・カサが開いておらず、白くツヤがあり、軸が太くハリがある
・持った時に、束全体にしまりを感じられる
・くさみが出ていない

エリンギ

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・軸が白くて硬く、弾力がある
・カサが外側まで開いておらず、裏のヒダが白くハリがある
・軸にしわがあるものは古い可能性も

まいたけ

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・カサの色が黒い
・肉厚でハリがあり、しわがない
・軸の部分が白いものが新鮮
・株を割ったパック入りのものより、房である程度まとまっているものがおすすめ

【保存方法】冷凍保存でうま味アップ!

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冷蔵保存する

生のきのこはキッチンペーパーにくるみ冷蔵庫で保存しましょう。きのこは水分に弱いので洗わないのがポイントですが、気になる場合はペーパーでふき取る程度ならOKです。パックのままよりもペーパーにくるんで密閉袋に入れて保存したほうが長持ちします。

ビタミンB2や葉酸は光に弱いので、光が入らないところに保管し、なるべく早く食べきりましょう。

冷凍保存する

きのこは基本すべて冷凍保存することができます。しかも、冷凍すると細胞が壊れてうま味成分が溶けだし、美味しくなるとも言われています。

石突を取って食べやすい大きさに切り、密閉袋に入れましょう。石突はおがくずがついているところのみ、最小限を取るだけで大丈夫です。しかし、きのこの長所であるあの独特な香りは時間の経過とともにとんでしまいます。香りを大切にするためにも、冷凍しているからと油断せずに1ヵ月を目安として早めに食べきってください。

また、きのこは冷凍のまま加熱することが可能です。そして、汁物、あえ物、炒め物、蒸し物と調理法を選ばないのもメリット。ただし、大きさによりますが、揚げ物にすると水分が一気にでて油が飛ぶ危険がありますので、調理の際は気をつけましょう。

【豆知識】まつたけはなぜ貴重なの?

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きのこの王様といえば、まつたけ。アジア地域に広く分布し『万葉集』の歌では「秋の香」と詠まれるなど、日本でも古くから知られていました。

1年中出回っているほかのきのこと違って、まつたけが店頭に並ぶのは秋だけです。その理由は、まつたけは人工栽培方法が確立されてないため。天然のまつたけも減少傾向で、年々その希少価値が高まっています。

まつたけはなんといっても香りが命ですので、洗わずに調理するのがおすすめです。汚れが気になる場合は布巾などできれいに拭くと良いでしょう。

旬野菜を食卓に取り入れて、美味しく健康的な生活を

多くの研究で、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病、ある種のがんにかかる確率が低いという結果が出ています。『健康日本21(第二次)』によると、生活習慣病などを予防するための目標値のひとつに

野菜類を1日350g以上食べること

が掲げられています。毎日の食卓に、旬の野菜を取り入れて、美味しく健康な食生活を送りましょう。

記事情報

引用・参考文献

著者プロフィール

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前田 量子(まえだ・りょうこ)
管理栄養士 野菜ソムリエ ロジカル調理研究家。
著書『ロジカル調理』『ロジカル和食』『考えないお弁当』をはじめ、電子レンジの加熱時間や法則を書いた『ロジカル電子レンジ調理』が2022年2月に発売。調理科学で普段のもやもや悩みをすっきり解決 。スーパーの食材で本当に美味しく&家族が楽しみにしてくれる定番家庭料理を作れるようになる料理教室主宰。

制作

文・レシピ:前田量子
イラスト:小泉由美

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