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2019.06.05

食事の内容と認知症リスクの関連とは?【KenCoM監修医・最新研究レビュー】

KenCoM監修医:石原藤樹先生

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身体は食べているものから作られる…とは言いますが、認知症の発症もそれまでの食事内容から影響を受けているのでしょうか?

当連載は、クリニックでの診療を行いながら、世界中の最先端の論文を研究し、さらにKenCoM監修医も務める石原藤樹先生の人気ブログ「北品川藤クリニック院長のブログ」より、KenCoM読者におすすめの内容をピックアップしてご紹介させていただきます。

今回ご紹介するのは、2019年のJournal of Alzheimer's Disease誌に掲載された、食品の摂取量と認知症リスクとの関連についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

食事と認知症にはどのような関係があるのか

食事と認知症リスクとの関係については、それほど多くのことが分かっていません。

理屈から言えば、抗酸化作用のある食品を多く含む、野菜や果物を多く摂ることは、認知症の予防にも繋がりそうです。

また、動脈硬化性疾患の予防効果のある、青魚の脂の成分であるEPAやDHAを多く摂ることも、認知症の予防に繋がりそうです。

一方で獣の肉は飽和脂肪酸を多く含み、認知症のリスクを上げるという可能性もあります。

ただ、実際に大規模な疫学データにおいて、こうした点は明らかになったとは言えません。

それは、ある時点において、認知症と特定の食品との間に関連があったとしても、認知症の原因から発症までの間には、10年以上という長い時間が掛かるので、それを検証することが困難であるからです。

フランスにて食事内容と認知症発症の関連を検証

肉の摂取量が少ないと、認知症リスクがアップするという結果に

今回のデータはフランスにおいて、65歳以上の一般住民5934名を12年間観察したものですが、食事調査から4年以内の認知症の発症は除外して、食事と認知症との関連を検証することで、見かけ上のバイアスをなるべく減らすように工夫されています。

その結果は興味深いもので、週に4回以上肉を食べている人と比較して、週に1回以下しか肉を食べていない人は、その後の認知症の発症リスクが1.58倍(95%CI: 1.17から2.14)、アルツハイマー型認知症のリスクが1.67倍(95%CI: 1.18から2.37)、それぞれ有意に増加していました。
そして、魚や果物、野菜の摂取量と認知症リスクとの間には、有意な関連は認められませんでした。

今回の検証ではこれまでの知見とは異なり、肉の摂取量が少ないことが認知症のリスク増加と関連してました。

動物性蛋白質を過不足なくとることが大切

肉好きを喜ばせるような結果ですが、動物性蛋白を過不足なく摂ることが、認知機能の維持のためには、有益であるのかも知れません。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。著書に「誰も教えてくれなかったくすりの始め方・やめ方-ガイドラインと文献と臨床知に学ぶ-」(総合医学社)などがある。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36