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2022.12.15

メリットもデメリットも。ゲームが及ぼす子どもの脳への影響【kencom監修医・最新研究レビュー】

kencom監修医:石原藤樹先生

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今やスマホゲームやテレビゲームは、小中学生に限らず幼児の間でも当たり前のように普及しています。親世代には「ゲームは脳に悪い」という先入観があるのですが、実はそういうわけでもないのだとか。

今回ご紹介するのは、JAMA Network Open誌に、2022年10月24日ウェブ掲載された、ビデオゲームが小児の脳に与える影響についての論文です。

▼石原先生のブログはこちら

ビデオゲームをすると攻撃的な人間になる?

コンピューターやスマホなどを使用して行う、ビデオゲームやコンピューターゲームと言われるものは、もう大多数の人にとって欠かせない娯楽や暇つぶしや、余暇の過ごし方となっていて、一部の人にとっては仕事や生活の糧ともなっています。

ただ、その小児や青少年への影響については、様々な見解があって未だ一致した結論に至っていません。

かつてテレビが娯楽の新しい道具として登場した時には、テレビを見ると馬鹿になる(実際はもっと過激な表現)と言われました。同様にビデオゲームをやり続けていると、攻撃的で衝動的な人間になる、というような言われ方をすることがあります。

これは満更根拠のない言説ではなく、実際にそうしたデータが幾つか論文化されています。ただ、その一方でそうした傾向は認められなかった、というような報告もあり、議論はまだ解決には至っていないのが実際です。

その一方で小さな頃からビデオゲームに慣れ親しんでいると、脳の刺激に対する反応は速くなり、認知機能の発達にも良い影響を与えるのではないか、という考え方もあります。

これは事実でしょうか?

ゲームをする子としない子の認知機能等を調査

今回の研究はアメリカのバーモント州において、9歳から10歳の2217名を登録し、認知機能のテストや機能性MRIによる検査を施行して、認知機能とビデオゲームの習慣との関連を比較検証しています。

その結果、殆どビデオゲームをしていない子供と比較して、1週間に21時間以上ゲームをする習慣のある子供は、行動のために一時的に情報を記憶して活用する能力である、ワーキングメモリーと、目的に合った行動のために他の行動欲求を抑制する、行動の抑制の機能が、有意に優れていることが確認されました。

機能性MRIにおいて、そうした機能が必要なタスクを施行時の、血流パターンに差のあることも確認されました。

これはゲームの影響の一面を見ているのみであることに、注意が必要ですが、成長期におけるビデオゲームの影響は、決して一面的なものではなく、小児の成長に良いものも悪いものも含めて、多岐に渡る影響を与える可能性があることが明らかになったのは、非常に意義のあることだと思います。

ゲームが脳の一部の発達を促すことが判明

今後こうした研究がより詳細に行われることにより、ビデオゲームと脳との関連が解明され、小児のバランスの取れた成長のためには、どのようにゲームと関わることがベストであるのか、検証が深められることを期待したいと思います。

▼参考文献

<著者/監修医プロフィール>

■石原藤樹(いしはら・ふじき)先生
1963年東京都渋谷区生まれ。信州大学医学部医学科、大学院卒業。医学博士。研究領域はインスリン分泌、カルシウム代謝。臨床は糖尿病、内分泌、循環器を主に研修。信州大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科を研修の後、1998年より六号通り診療所所長として、地域医療全般に従事。2015年8月六号通り診療所を退職し、北品川藤クリニックを開設、院長に就任。2021年には北品川藤サテライトクリニックを開院。著書多数。
・略歴
東京医科大学地域医療指導教授/日本プライマリ・ケア連合学会会員/医師会認定産業医/医師会認定スポーツ医/日本糖尿病協会療養指導医/認知症サポート医
・発表論文
-Differential metabolic requirement for initiation and augmentation of insulin release by glucose: a study with rat pancreatic islets. Journal of Endocrinology(1994)143, 497-503
-Role of Adrenal Androgens in the Development of Arteriosclerosis as Judged by Pulse Wave Velocity and Calcification of the Aorta. Cardiology(1992)80,332-338
-Role of Dehydroepiandrosterone and Dehydroepiandrosterone Sulfate for the Maintenance of Axillary Hair in Women. Horm. Metab.Res.(1993)25,34-36